全国避難者情報システム と 不在者投票 … 名簿管理が多重化?
全国避難者情報システムをカバーし、避難先での行政サービスを受ける権利を法的に保証する原発避難者特例法が成立した。原発避難者に対して避難場所等の届出の呼びかけが始まり*1、指定市町村(指定都道府県)や特例事務が固まれば、避難民にとって特例法は本格稼働する。
その一方で、東日本大震災のため被災地で延期されていた選挙がいよいよ始まる。そのために、避難民に対して、不在者投票のための投票用紙請求書・宣誓書を避難元自治体大して提出を求める案内が、総務省ウェブサイトに出ている*2。
さて、これは、何なのだろう。
不在者投票用紙を請求させる発想としては、原発避難者特例法以前に存在していた、既存の制度である、不在者投票制度(総務省|投票制度)を活用しようということなのであろう。
避難民にとっては、もし、すでに避難元自治体に避難先を申し出済みであるならば、二度手間であり、面倒くさい。避難をしていれば不在であることは明らかであり、投票用紙請求はするまでもないはず、と考えるのが自然。
避難元自治体にとっても、避難民から避難先の申し出を受付済みであった場合、改めて不在者投票の受付を行うことは、事務が重複する。
やっかいなのが、管理すべき名簿が複数になった場合に名寄せ作業が発生すること。避難先を届け出ていない住民が、不在者投票用紙請求を行ってきた場合(合理的な行動では何が、現実には発生しうる)、そのことを避難先名簿に還元しなければならない。
避難民受け入れ先の自治体にとっても、住民基本台帳掲載の住民だけでなく、特例法により非掲載住民も、行政サービスの対象として事務を行わなければならない。行政サービスのシステムは、住基システムと連動しているだろうけど、外出し名簿を取り込まなければならないことになる。
システム改修を行うとなると容易なことではないが、避難民名簿が複数になると要件はさらにやっかいになる。
被災者避難先事務処理特例法の施行は、「社会保障・税に関わる番号制度」構想にとって障害になるのではないか。 - 繰り言でも懸念を示したが、行政事務と情報システムで混乱しないよう、なるべく煩雑にならない制度設計が必要。