サーマルリサイクルは、"和製英語"

 プラスチックごみ(プラごみ)のリサイクル率の扱いが、日本と国外と違うという言説がある。
forbesjapan.com

 その主張の理由は、ここにある。(下線は筆者による)

日本のリサイクル率84%のうち、ケミカルリサイクルはわずか4%。マテリアルリサイクルも23%である。さらにそのうち15%は中国に輸出されてからリサイクルされていて、国内でマテリアルリサイクルされていたのは8%にすぎない。…

それでは、残りの56%を占める「サーマルリサイクル」とは、一体なんなのか?

サーマルとは、「熱の」という意味だ。サーマルリサイクルは、非常にシンプル。ペットボトルなどのプラスチックをごみ焼却炉で燃やし、その熱をエネルギーとして回収する仕というものだ。回収された熱は火力発電や温水プールに利用されたりしている。ごみを用いた火力発電は「ごみ発電」とも呼ばれている。

リサイクルには「循環する」「回る」という意味がある。形状や用途の違う製品になるのは正確にはリサイクルではないという意見もあるぐらいなのに、プラスチックが熱エネルギーに変わることを「リサイクル」というのはさすがにおかしいと感じないだろうか。その感覚が世界の標準だ。

なぜなら、海外にはサーマルリサイクルという言葉はなく、「エネルギー回収」や「熱回収」と呼ばれ、そもそもリサイクルとみなされていない。海外でのリサイクルの主流は、マテリアルリサイクルや、ちゃんとモノに生まれ変わるタイプのケミカルリサイクルだ。

 この主張の根拠を、それぞれ見てみよう。

 環境省の廃棄物に関する報告書によれば、
廃棄物の燃料化(含む、熱源)は、循環利用(マテリアルリサイクル)の中で整理されている。
そして、循環利用の外に、焼却処理が置かれていることに留意。

本調査で整理した廃棄物等の種類別処理項目(廃棄物等循環利用量実態調査)

表 脚注

出典: 廃棄物の広域移動対策検討調査及び廃棄物等循環利用量実態調査報告書(令和3年度)(2022年3月)
環境省 > 政策 > 政策分野一覧 > 環境再生・資源循環 > 報告書
www.env.go.jp

注1)燃料化(一廃):破砕・固形化等の処理を経たのち、燃料としての利用に向かうものについては、最終的に熱源として利用されることとなるが、再資源化等のプロセスから出た時点では物量として把握できることから、マテリアルリサイクル量の内数と考え、その量を「燃料化」とする。

注2)破砕・固形化等の処理を経たのち、燃料としての利用に向かうものについては、最終的に熱源として利用されることとなるが、再資源化等のプロセスから出た時点では物量として把握できることから、マテリアルリサイクル量の内数と考え、その量を「燃料化」とする。
  なお、高炉への還元剤として含まれるプラスチック製容器包装などの量についても「燃料化」とする。

注9)プロセス2(焼却処理)(等):稲わら・麦わら・もみがらの焼却処理された量を「プロセス2(焼却処理)」とする。

 一方、国連の 環境・経済統合勘定 主要枠組を見てみよう。

 こちらでも、焼却 Incineration があって、その外に循環利用 Recycling and reuse がある。
そして、エネルギー生成焼却 Incineration to generate energy は前者に含まれる。後者ではない。

Physical use table for solid waste

出典: System of Environmental-Economic Accounting 2012—Central Framework
seea.un.org

 このため、国連の枠組では、熱源(サーマル)のことがリサイクルと書かれることは、原理的にない。