出生率に関する数字遊戯
財政当局が予想成長率に基づいて税収予測や経済運営方針を考えたり、中央銀行が期待インフレ率に基づいて金融政策シミュレーションをしたり、することとはわけが違うと思う。
現実とは異なる理想を使って政策を語るような遠回りは、税金と時間の浪費。考えるべきことは、単刀直入に、生涯未婚率の増大や完結出生児数(夫婦の最終的な出生子ども数)の減少を今後どうするのか、のはず。再生産人口という女性の絶対数は、第2次ベビーブーマーというコーホートが再生産可能年齢を通り過ぎるとともに先細って行く。
出生率「1.8」で人口推計 「子育て層」もベース(産経 10日)
厚生労働省は9日、潜在的な「子育て層」をもベースにした新たな将来人口推計を年内にも出す方針を固めた。従来の人口推計は、過去の出生率や未婚率など実績をベースに予測する手法がとられている。新たな人口推計は、独身者の結婚が進み、夫婦が理想とする数の子供が実際に生まれた場合、合計特殊出生率が平成17年の1.25から1.8程度まで回復するとの試算に基づくもの。少子化に歯止めがかかる社会の姿を示すことで、少子化対策の機運を高め、具体的な施策を見いだすのが狙いだ。
国立社会保障・人口問題研究所が17年に実施した出生動向基本調査によると、夫婦が理想とする子供の平均数は2.48人、実際に持ちたいと考える「予定子供数」も平均2.11人。だが、経済的な理由などによる理想と現実のギャップは大きい。また、独身者のうち将来結婚を考えている人は男性87%、女性90%にのぼる。厚労省は有効な対策を講じればギャップの大半は埋まり、合計特殊出生率の1.8程度への回復は可能だとの分析結果をまとめた。
こうした潜在的な「子育て層」を含めた1.8に基づき新たな人口推計を出すのは、「楽観的」な数値を示すことで少子化の反転はそれほど困難ではない、との認識を国民にもたせ、年金制度に対する不信のさらなる拡大を緩和したいとの思惑もある。
「理想の推計人口」、厚労省が試算へ(日経 10日)
厚生労働省は「国民の結婚・出産に関する希望が叶った場合の人口」を試算し、来年1月に公表する。年内にまとめる将来推計人口とは別のいわば「理想の推計人口」で、柳沢伯夫厚労相が10日の経済財政諮問会議で明らかにした。今月中にも社会保障審議会人口部会のメンバーを中心に有識者会議を立ち上げ、現実を理想の推計人口に近づける方策を話し合う。
将来の年金「現役収入の50%」困難、厚労相が示唆(産経 11日)
柳沢厚生労働相は10日の経済財政諮問会議(議長・安倍首相)で、2004年の年金改革で政府・与党が約束した「現役世代男子の平均手取り賃金の50%を下回らない」という将来の年金給付水準の確保が難しくなったとの認識を示唆した。
12月20日ごろに公表する予定の新しい人口推計で、想定よりも少子化が進み、年金制度を支える世代が減少する見通しとなったためだ。
(中略)
厚労省は、新人口推計の発表時に、新設する出生率の政府目標の標準値として、年金の給付水準が維持できる1・4程度を掲げる見通し。目標実現の可能性は不透明だが、少子化対策の拡充などを通じて、国民の年金不信の高まりを抑えたい考えだ。