Big Bang: The Origin of the Universe (ペーパーバック版 Simon Singh)
サイモン・シンによるフェルマーの最終定理、暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで に続く、科学三部作ビッグバン宇宙論の原本。
話の始まりが人類の歴史が残っているギリシャ時代からという手法は、シンの3作目でも踏襲されている。その時代から、宇宙マイクロ波背景放射に分散がある、というビッグバン理論を裏打ちする1992年の発表までが、この本が記述する最新部分。さらにエピローグとして、インフレーション理論に名も出てくる。
科学的発見を、人物活写を交えて語るのが面白い。シンによる人物活写の中で、一つの軸となるのが、科学をすることにより対立、迫害される者に対する注ぐ視線。天動説vs地動説は歴史の教科書にも載るが、ビッグバン vs 定常宇宙についても長く膠着があったことはよく知らなかった。科学者間のねたみまでが、今回、劇的に描写されていた。こういう話は、宇宙物理のテキストでは出てこないだろう。
きっと彼の次作は、右翼化する現在アメリカが否定しようとやっきになっている進化論のことはどうかと思っていたが、どうやらそのようにはならないようである。
ペーパーバック版 Big Bang の巻末付録の、シンへのインタビューで、彼は、この本が最後の大きな本(likely to be my last major book)と言っている。博士号を取得し、BBCテレビの制作に携わり、放送に関わり、そして本を書いて、その次にしたいことをしたいのだという。
私の興味に答えてくれそうなのは、The Republican War on Science(Chris Mooney)のようだが、これはアメリカの現知事情に通じてないととても読めそうに思えない。訳注のある翻訳版が出ることを期待。