足し算のできない大人たち

 社団法人 BSデジタル放送推進協会(BPA)は、BSデジタル放送の普及数、1000万件を突破というリリースを9月9日付で発表した。

9月8日、NHK・橋本会長の定例記者会見で、8月末のBSデジタル放送の普及数が発表され、BSデジタル放送の普及数は1000万件を越えたことがわかった。

 本当だろうか?NHK会長会見資料2005年9月実施「デジタル放送の普及状況について(8月末速報値)」によると

BSデジタル放送
8月末現在、BSデジタル放送受信機           約830万 台
ケーブルテレビでデジアナ変換してご覧になっている世帯 約183万 世帯

としか書いていない。単位が異なる。台と世帯は、足せる数字ではない。

 しかるに、BPAは、それをやってのける。BPAのリリースの続きをさらに引用すると、

それによると、デジタル受信機器が合計で830万台、ケーブルテレビ経由でアナログ視聴をしている世帯数が183万世帯で、これらを単純に合計すると普及数は1013万となる。

 受信機器の単位は台、視聴の単位は世帯、「単純に合計」する普及数の単位は、果たして、ないのである。

 これらを足せる数字である、という論理が成り立つならば、日本の自動車運転者数は日本の人口をはるかに上回る、という説さえ、まかり通ることになる。

 すなわち、2004年時点の運転免許保有者 77,467,729(警察庁運転免許統計(平成16年版))、自動車保有台数77,390,245(自動車検査登録協力会 自動車保有台数推移表(軽自動車を含む))、合わせて 154,857,974、すなわち、日本のドライバーは、約 1億5600万である。*1

 下の写真は、BPAとBSデジタルテレビ放送8局による共同記者会見の写真である。この会見には、自分が公表した資料数字が曲解されているにもかかわらず、NHK会長自らも含まれている。

 この大人たち、みんな足し算ができない人たちです。

 以上のことに関連したウェブページとして、「デジタル放送の「善意の嘘」は許されるか」というのを見つけた。でもこのページ、よく読んでみると、今から2年前のものであった。上で筆者が指摘したことは、数字粉飾の歴史にまた新たな1ページとなるもの、ということか。

*1:厳密には、警察庁統計は2003年12月、自検協は2004年3月のものであり、時点が異なる。