日経書評欄から

 東浩紀の「半歩遅れの読書術」がおもしろい。

 先週は、書店が現代テレビ化してしまっていること指摘し、今週は、ソーシャルメディアで著者と直接触れ合うことから始まる本との出会いを綴っていた。

 ビッグデータを回して得た戦略、エビデンスを、実行する際に、必要となる社会技術は、ソーシャル・キュアになるんだろうかな。

クール革命―貧困・教育・独裁を解決する「ソーシャル・キュア」

クール革命―貧困・教育・独裁を解決する「ソーシャル・キュア」

すると、害や危険性は当人もよく分かっているのに行動を改善できないケースが実に多いことが判明した。つまり「警告」するだけの情報提供など的外れ。むしろ当事者が“前向き”なピア(仲間)・プレッシャーをかけ合う「ソーシャル・キュア」のほうがはるかに効果的ということだ。

本書にはこうした興味深い事例が満載されており、吸い込まれるように一気に読破した。ダイエットからまちづくりまで「ソーシャル・キュア」が活(い)かせる場面がないかあれこれ想像しては、楽しい気分にもなる。

 以下の二つと、今読んでる文藝春秋の「日本の自殺」を合わせ見て、ハシズムのことに思いをいたす。

経済・金融のグローバル化を長年批判してきた著者が、本書では「利益の私有化と損失の社会化」の問題をくり返し指摘している。

国民皆保険の時代: 1960, 70 年代の生活と医療

国民皆保険の時代: 1960, 70 年代の生活と医療

興味ぶかいのは、今、声高に皆保険を死守せよと叫んでいる日本医師会の執行部が、医療の社会化を医療の国有化ととらえて危惧していた事実だ。「医療の国有化」が成って以降、医師会は一貫して診療報酬の引き上げを求めてきた。皆保険がはらむ矛盾の一例だ。

読後に感じたのは「愚者は経験に、賢者は歴史に学ぶ」という言葉が、野田政権の一体改革にどれほど生かされるのか、という疑問だ。