歳入庁構想を混ぜ返す 日経 は、財務官僚の走狗
最近の日経は、読んでいると、頭が悪くなりそうな気持ちになるが、昨日の記事には、頭に来た。
4月7日付けから。
(連載記事)消費税 法案の焦点(5)
「歳入庁」で徴収一元化 「ムダ減らし」議論に溝消費増税関連法案は税と社会保険料を一元的に徴収する「歳入庁」の創設検討を盛り込んだ。行政のスリム化と同時に徴収漏れを防ぐのが狙いだ。ただ国税庁と日本年金機構(旧社会保険庁)を統合する再編になるため、財務、厚生労働両省を中心に慎重論が根強い。
(中略)
共通番号も課題
国税庁の情報力や徴収力を活用すれば、年金保険料の未納問題などが解消に向かうとの期待も強い。半面、小口の保険料を集める社会保険と、巨額の脱税を追うこともある徴税とでは業務の性格が違うとの見方もある。米国では内国歳入庁が税と社会保険料を一元的に徴収。英国やスウェーデンも同じような方式だ。ただ日本とは税や社会保障制度で違いもある。日本の歳入庁創設に向けては、年金制度の再設計や共通番号制度の実現が前提になるとの声が多い。
歳入庁設置という組織を創設する話を取り上げる記事は、創設することへの賛成意見と反対意見を並べることで、中正公平 ( 日本経済新聞社 行動規範 )の形を取っている。
問題の本質は、記事のタイトルにあるとおり、「歳入庁で徴収一元化」である。税と社会保険料の一元的な徴収を進めることこそが、本質であり、歳入庁設置というのは、その手段に過ぎない。
ところが、この記事の締めくくりは、税と社会保険料の一元的な徴収は日本に合うのだろうか?と懐疑的なポーズをとり、歳入庁創設という課題を混ぜ返している。
歳入庁に関する世論に対するマインドコントロールとして。日経は、経団連の手先になっているだけでなく、財務省の手先になっていることが透けて見える。
同じ記事から。
民主党が2009年に掲げた衆院選マニフェスト(政権公約)の目玉だったが、放置されてきた。消費増税論議をきっかけに再浮上した形だ。
政府と民主党はともに月内にも中間報告をまとめる。党のワーキングチーム(WT)では近く執行部が提言案をまとめ、総会で了承を得る見通し。政府も作業チームを設けたが「結論が先にあるのではなく、ニュートラルだ」(岡田克也副総理)と温度差もみられる。
岡田克也が、マニフェストを反故にして「ニュートラル」をうそぶく理由は何か?
捜査権限までも付与された徴税権力である国税庁を内に抱える財務省から、にらまれたくないから。
具体的には、国家予算を握っている財務省とうまくお付き合いしたいし、自分の政治資金経理に関して、国税庁に手を突っ込まれたくもないから(もしかして岡田克也は財務省にすでに何か握られているのかもしれない。)
財務省にとっては、国家予算編成以上の権限である国税庁に口出しされたくないし、根本的に体質の違う*1 旧 社会保険庁・現 日本年金機構の不良人材など引き取る気など、さらさら無い。
国家公務員であった社会保険庁職員を、特殊法人 日本年金機構 という民間人に転換している。
この官民転換は、表面上は、親方日の丸的姿勢をお客様指向の民間感覚に体質変換させる、という政治的決断、ということになっている。
表面的には。
けれども、このことは、私には、財務省の意図を感じる。
税金と社会保険料。
日本では法律によりこれら二つは別物扱いされているが、国が国民めいめいから収入に応じた金を徴収するという点では、行政機能は重複している。
この似通った機能のため、異なる2つの行政機関が存在することは、行政改革により統合されていくことが、普通に考えれば自然のことである。
民主党がマニフェスト2009で言う以前から、ずっと繰り返されてきている議論。
しかし、社会保険庁は、日本年金機構という特殊法人、民営化がされてしまった。
こうなると話は違ってくる。
国税庁と日本年金機構の統合は、国税庁と社会保険庁の統合よりも、政治的判断のハードルは格段に高いからだ。
なぜか。国家公務員の数を増やすことになるから。
「国の人件費を増やすな」という世論にくじけることなく、行政機関と特殊法人を統合する作業に必要となる政治的なエネルギーは相当に大きい。
もっとも、私に言わせれば、「国の人件費を増やすな」という越えも意図的に本質を見誤らせる戯れ言に過ぎない。
問題は、人件費ではなく、国税庁の予算と日本年金機構の運営費(これだって結局は税金・社会保険料)の総額のはず。
岡田克也に言いたい。「自ら身を切ろ」という合唱に、迎合することなかれ。
藁(ワラ)は増やすが身は削れ、には限度があることを、そのうち知ることになるだろう。
The last straw that breaks the camel's back.
一本のワラでも限度を越えるとラクダの背骨を砕く。
*1:AIJ問題における 社保OB のアホさ加減に象徴される