被災者避難先事務処理特例法の施行は、「社会保障・税に関わる番号制度」構想にとって障害になるのではないか。
8月5日に、被災者避難先事務処理特例法*1が成立した。
東日本大震災の被災者が、被災地自治体から住民票(住民基本台帳)を移さずとも、避難先の他の自治体の行政サービスを受けることができるように法的整備をしようというもの、と筆者は理解している。
その趣旨には賛同するが、腑に落ちないことがある。
社会保障・税に関わる番号制度(いわゆる、マイナンバー)は、住民基本台帳に基礎を置き、それをアンカーにしながら行政サービスや徴税事務がひも付けられることになっている。
住民票の移動が実態と乖離しているのは、親元を離れての子供の就学や、家族を残しての単身赴任などでこれまでも事実上容認されているであろう。しかし、マイナンバー制度の下では、厳密に役所に届けをしないと、居住地での行政サービスなどを受けられなくなるようになることが考えられ、実際、そのようにしておかないと、住民のいい加減さのために、行政は住民の居住確認のために相当のコストを負担しなければならなくなる。マイナンバー制度を機に、そのいい加減さは正されていくことになるものと思っていた。
しかるに、事務処理特例法は、この住基台帳の置き場所が実態と合っていなくても、社会保障や税の処理を要求しようとするものになっていないのか。
マイナンバー制度に関する法案はこれから作成されていくのだろうが、この事務処理特例法がその作業にとってやっかいなことになってしまうのではないか、と危惧する。
被災民が住民票を残しながら避難に出ている現状は、まだ、しばらくはやむを得ないだろう。しかし、マイナンバー制度が稼働に向けて、なんらかの手当が必要になるだろう。