キューポラのある街

キューポラのある街 [DVD]
 キューポラのある街を初めて観た。スクリーンで観てきた。初めて、ラピュタ阿佐ヶ谷で。

 劇中、バラック街の大人子供の口の端から何度か出てくる「所得倍増」という希望の言葉が、胸に響いた。

 日本が、新興国としてまさに立ち上がろうとしていた時代の空気の映画。1962年公開、今から約50年前に撮られたもの。吉永小百合の代表作としても、有名。

 中学生役の吉永小百合の家族が住むバラック街。近所には、河原の掘っ立て小屋の、画に描いたようなあばら屋から、おしゃれな二階建てのお家まで(おやつには、紅茶にケーキまで出てくる)。

 生活水準の振れ幅が広過ぎる。それでも、そんな家々で寝起きしている人たちが隣り合わせで生活をしている、そんな東京近郊の川口市

 東京タワーが組み上がったのは、1958年。集団就職の金の卵達が続々と職に就いていたであろう東京周辺、そんな時代に実際に撮られていた映画。こんな日常だったんだろう。懐古趣味で作った映画「三丁目の夕日」なんて、クソ食らえ。

 映画のスクリーンからは匂い立つはずことはないのだけれども、想像で、どぶ川や土ぼこりが漂ってくる。そんな時代感。

 「北鮮」・「南鮮」という当時の言葉、中学校の修学旅行(奈良・京都)のお金に事欠くこと、中卒就職、定時制高校という選択肢。

 こんな時代を越えて、今日の生活がある。そのことに、思いを馳せる。