本質は、年率換算よりも、季節調整*1
経済指標のニュースで「年率換算」という言葉を見ることがあります。どういうものですか。
この記事では、回答のために、内閣府の国内総生産(GDP)(四半期QE)を例に取っている。
GDPの増減を評価するのに、まず、
(1)季節的な影響を取り除いた「季節調整値」を計算し、それを前期と比較して前期比の成長率を算出
する。この前期比は、これ自体便利な指標である。
そして、前期比を基に、話をもう一歩進める。
一年間の数字が注目される指標の場合、四半期や一カ月単位でみるより、年間の数字に置き換えた方が、どの程度の水準なのか判断しやすくなる
そこで、1年間での見た増減を見るために (2)前期比を四乗したすることで*1、年率換算の値を計算する。
このように、直近の傾向を基にして経済の動きをつかんでいこう、という説明になっている。
記事では、この年率換算について、
『瞬間風速』の変動が一年間ずっと続くような印象を受け、判断を誤る可能性がある。
と、留意点をちゃんと加えている。
具体的な例を引いてみよう。共同通信から。
米新車販売27年ぶり低水準 2月41%減、GMまた半減
【ニューヨーク3日共同】米調査会社オートデータが3日にまとめた2月の米新車販売台数(速報値)は、前年同月比41・4%減の約68万8900台と大きく減少した。このペースが1年間続いたとして換算すると、1981年12月以来、約27年ぶりの記録的な低水準という。前年割れは16カ月連続。自動車不況の深刻さが鮮明になった。
米最大手ゼネラル・モーターズ(GM)は53・0%減と2カ月連続でほぼ半減となった。クライスラーも44・0%減となるなどビッグスリー(米大手3社)は急減。日本勢もトヨタ自動車が39・8%減、ホンダが38・0%減、日産自動車が37・1%減と大手3社がそろって4割近く落ち込んだ。
景気後退による個人消費の悪化や、金融危機による自動車ローンの低迷が響き、市場全体では5カ月連続で30%以上の大幅減となった。
2009/03/04 08:54 【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009030401000037.html
記事では、(1)季節調整+(2)年率換算の2つをセットにして、そのセットを実現していることをもって「経済統計が整備された」とする米国と、そうとはなっていない「統計の整備が遅れている」中国やインドなどを、対比している。
統計整備の発展過程を、(1) 季節調整の有無で論じることは誤りではないだろう。
しかし、公表が (2) 年率換算されているかどうかで判断するのは、熊野氏指摘の通り、短絡的ではないだろうか。
*1:正確には、( 前期比 + 1 )^4 - 1) のはず。