本質は、年率換算よりも、季節調整*1

 経済指標のニュースで「年率換算」という言葉を見ることがあります。どういうものですか。

 20日日本経済新聞朝刊15面ニュースマスター・エコノ入門塾(宮田佳幸 編集委員 署名記事)

 この記事では、回答のために、内閣府国内総生産(GDP)(四半期QE)を例に取っている。

 GDPの増減を評価するのに、まず、

(1)季節的な影響を取り除いた「季節調整値」を計算し、それを前期と比較して前期比の成長率を算出

する。この前期比は、これ自体便利な指標である。

 そして、前期比を基に、話をもう一歩進める。

 一年間の数字が注目される指標の場合、四半期や一カ月単位でみるより、年間の数字に置き換えた方が、どの程度の水準なのか判断しやすくなる

 そこで、1年間での見た増減を見るために (2)前期比を四乗したすることで*1、年率換算の値を計算する。

 このように、直近の傾向を基にして経済の動きをつかんでいこう、という説明になっている。

 記事では、この年率換算について、

『瞬間風速』の変動が一年間ずっと続くような印象を受け、判断を誤る可能性がある。

第一生命経済研究所 熊野英生 主席エコノミスト

と、留意点をちゃんと加えている。

 具体的な例を引いてみよう。共同通信から。

米新車販売27年ぶり低水準  2月41%減、GMまた半減
【ニューヨーク3日共同】

 米調査会社オートデータが3日にまとめた2月の米新車販売台数(速報値)は、前年同月比41・4%減の約68万8900台と大きく減少した。このペースが1年間続いたとして換算すると、1981年12月以来、約27年ぶりの記録的な低水準という。前年割れは16カ月連続。自動車不況の深刻さが鮮明になった。

 米最大手ゼネラル・モーターズ(GM)は53・0%減と2カ月連続でほぼ半減となった。クライスラーも44・0%減となるなどビッグスリー(米大手3社)は急減。日本勢もトヨタ自動車が39・8%減、ホンダが38・0%減、日産自動車が37・1%減と大手3社がそろって4割近く落ち込んだ。

 景気後退による個人消費の悪化や、金融危機による自動車ローンの低迷が響き、市場全体では5カ月連続で30%以上の大幅減となった。

2009/03/04 08:54 【共同通信
http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009030401000037.html

 記事では、(1)季節調整+(2)年率換算の2つをセットにして、そのセットを実現していることをもって「経済統計が整備された」とする米国と、そうとはなっていない「統計の整備が遅れている」中国やインドなどを、対比している。

 統計整備の発展過程を、(1) 季節調整の有無で論じることは誤りではないだろう。

 しかし、公表が (2) 年率換算されているかどうかで判断するのは、熊野氏指摘の通り、短絡的ではないだろうか。

*1:正確には、( 前期比 + 1 )^4 - 1) のはず。