TAPAS MOLECULAR BAR

TAPAS MOLRECULAR BAR

 マンダリンオリエンタルホテル東京の食宴

 名は体を語る。この名前の言葉が意味するところを考えてみることが、まず興味深い。

 BARに関する紹介文は、英語と日本語とでは微妙に異なっている。

Take a seat at our Tapas counter for a unique molecular-cuisine experience. In the course of about two hours our chefs will prepare 21 plates of bite sized delicacies before you, sushi-bar style, creating intriguing new textures and flavour combinations. This is the ultimate gourmet tasting menu, exploring the science of cuisine.

Advance reservation is required.

奥のカウンターには、一回6席限定「タパス モラキュラーバー」があります。

キッチンという舞台に立つシェフが目の前で披露するパフォーマンスを「観劇」し、ひと口サイズで次々と供される21皿のプレゼンテーションを「鑑賞」。

厳選した食材をサイエンティフィックな手法を使い、普段目にするものとは異なる料理へと変えていきます。ひとつひとつのメニューに表現されたシェフのマジックは、味わい、食感、香りとなって広がり、新鮮な驚きと感動を呼び起こすでしょう。

ご予約は18:00と20:30の2回のみ。カウンターで繰り広げられる新しいダイニングをご体験ください。

 2つの文が必ずしも対応関係にあるわけではなく、誤訳ではないか、と思いかねない。ところが、実際にBARを経験してみると、どちらも、BARのことをかなりうまく描写していることに気付かされる。これらの紹介文についてもし難を付けるのであれば、"the science of cuisine"は「サイエンティフィックな手法を使」う以上のものがある、ということを指摘せずにはいられない。

 このBARにおいて、眼前に展開されることを即物的な言葉で再現することは はばかられる。このBARの通奏低音について形而上学に述べれば、このBARとはレシピ脱構築のためのラボであり、このBARが存在は質・量ともに既存のキュイジーヌに対するアンチテーゼである。

 このBARを骨の髄まで楽しむために必要な条件は、食事をしながら、シェフとの対話*1により哲学することである。Enjoy!

*1:私の時は,外国人と日本人の2人シェフが6人の相手をしている形態であり,食宴のプロデューサー役は外国人シェフの方のようである。英語を障壁に感じる人にはそうでない人と比べて面白さが減じてしまう可能性がある。