元号の社会的コスト: 過請求

 年の数え方を混同すると、こうなった。

 三十何年っていう数 と 元年(数字 と 文字)。数字としても、二桁と一桁。

 作業に従事する人間にとって、認知上のギャップがもたらす混乱は、小さくない。

 京都新聞6月22日から。

「令和10年」と誤入力、市税延滞金3381万円過大請求

 滋賀県甲賀市は22日、市税の延滞金計算にミスがあり、送付した督促状3176通に、計3381万9700円を過大に請求する内容で送付したと発表した。

 市税務課によると、5月末までに本年度の固定資産税や軽自動車税などの市税を納付しなかった市民3089人と法人87件に督促状を送った。延滞金の計算日をシステムに入力する際、「令和01年」とするべきところを「令和10年」と誤って入力していたのが原因だという。延滞金の合計は本来計約1万9千円という。

 21日に督促状を受け取った市民から指摘があり、判明した。同市は22日、対象者に正しい督促状と謝罪の文書を送付した。すでに納付した市民などには早急に還付するとしている。

 この甲賀市は、改元関係の事案を起こしたばかりの自治体。中日新聞3月21日。

甲賀市の水道使用量、新元号対応のシステム改修ミス修正中にデータ消失


 滋賀県甲賀市で、新元号対応のためのシステム修正におけるミスによって水道の検針データを消失するトラブルが発生した

 甲賀市では2月下旬に水道関連のシステム改修作業が行われ、これによって検針票に記載された口座振替予定日が「1年5月7日」「1年5月31日」などと記載されるようになったという。この日付は間違ってはいないものの、新元号になる前に発行される検針票は改元が行われる5月以降の日付を「31年」と表記するルールで、これを修正作業を行なっていた際に1655件の検針データが消失したという。

 甲賀市は、これらのことについてリリースを流していない。
しかし、市民に影響を与える事案であり、いずれも市役所外に知れるところとなった。

 この手の話は、報道に載らないだけで、枚挙に暇がないのではないだろうか。もっと踏み込んで言えば、元号を使おうとしていることで、どれだけのリソースが使われているのだろうか?


 同じ水道事業で、データ消失ではなく、振替日消失というお話。産経新聞WEST 4月5日から。

元号対応めぐり印字トラブル 口座振替日なし 4.5

 大阪府箕面市上下水道局は4日、新元号が公表された1日に実施した水道検針で、家庭や事業所に投函した検針票1365枚の口座振替日が印字されなかったと発表した。新元号に対応できるようシステムを改修中だったが、口座振替日の変更が対象から抜け落ちていたためという。

 同局によると、1365枚の口座振替日は新元号の「令和」となる5月7日。4月1日は新元号公表前の午前中から検針が行われたため、口座振替の日付を「平成31年5月7日」と表示すれば正しかったが、この部分が抜けて「上記料金の口座振替はです」と表示されていた。

 同局は振替日が書かれたおわび文を投函するとしている。

 元号の社会的コストについて、そろりそろりと、第2幕が始まった。*1

 元号をまたがって年数処理をする際、コンピュータを操作する人間は、正確に事務を行えるとは、限らない。

 そして、書類に記入を求められる人たちは、正しく(まじめに)書いてくれる、という前提は、取り下げておいた方がよい。