「匿名化」の議論の座標軸

 個人情報の「匿名化」に関する議論が、混乱していると思う。

「日本再生加速プログラム」(平成24 年11 月30 日閣議決定経済対策等 : 経済財政政策 - 内閣府

3.規制改革や民間の融資・出資の促進策など財政措置によらない経済活性化策

別表 規制・制度改革事項

番号:9

事項名: 個人を特定できない状態にした情報の利用の自由化

規制改革の概要: どの程度の加工等を実施すれば個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)に規定する「個人情報」に該当しなくなるのか、いわゆる連結可能匿名化情報の取扱い等、いわゆる「匿名化」に関して検討を行い、必要に応じ、事業等 分野ごとのガイドライン等に示す。消費者庁は個人情報保護関係省庁連絡会議等を活用し、各省庁に対しガイドライン等の周知を図るとともに、その取組状況について取りまとめ公表する。

実施時期: 平成25年度上期検討、結論

所管官庁: 消費者庁及び事業等分野ごとのガイドライン等を策定する各省庁

 ここで登場する「連結可能匿名化」という用語は、厚生労働省が厚生労働科学研究?のために定めた倫理指針である「臨床研究に関する倫理指針」において出てくる言葉である。

 臨床研究では、患者や投与した試料をトレースする必要がある。だから、治験データなどでは、個々のレコードの識別子を個々人と結びつけられるようにしている。もともと倫理性が求められている、臨床研究の世界である。生命を預ける医療従事者を信頼するしかない。その前提があるから、この世界の中で便宜上、「匿名化」という言葉を使っているのだろう。それについて、目くじらを立てる気はない(日本国外では、識別子が残っているデータを匿名化しているものと、認めるだろうか、という疑問はある。)

 一方、政府の規制・制度改革委員会の経済活性化ワーキンググループが、いわゆるビッグデータを活用した民間ビジネスの創出と称して よだれを垂らしている商品購入履歴や乗降履歴など(「経済活性化のための緊急提言」(平成24年11月26日)とは、別の世界のものである。氏名がなくても、識別子がなくても、行動パターンを元に個人を絞り込める可能性は相当ある。(参照 ネットフリックスコンテスト事件)

 これらを、一緒くたにして扱うには無理がある。