カラの仕事が、仕事になる。

 パスポート電子申請システムは、申請が極めて低調と指摘*1されて受付を停止した。(指摘から停止まで2ヶ月というスピード)

パスポート電子申請の停止について
平成18年8月31日
1. 外務省は、「e-Japan重点計画」における「行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進」の一環として、平成15年度末にパスポート電子申請を開始し、現在までに12県において本件システムが導入されてきました。
2. しかし、本年7月に公表された財務省による予算執行調査報告書において、本システムによる申請が極めて低調であること等を理由に、本システムの廃止を含めた見直しを早急に検討するよう求められました。
3. かかる指摘を踏まえ、見直しを行った結果、本件パスポート電子申請については、現時点において大幅な利用率の向上に目処が立っていない中での継続は困難であり、本年度内のできる限り早期に停止することが望ましいとの結論に至ったことから、本年9月末をもって本システムによる申請受付を停止することといたしました。
4. 皆様のご理解の程、よろしくお願い申し上げます。

 さて、会計検査院は、財務省がパスポート電子申請システムを指弾するよりも、よりも、根本的なことを指摘した。電子申請システムが対象とする手続きの半分は、紙の申請さえ来ないのだという。

 26日の日経から。

電子申請の利用率、0.94%どまり・04年度

インターネットなどで国の各省庁へ申請・届け出手続きをする「電子申請」の2004年度の利用率が0.94%にとどまっていたことが25日、会計検査院の調べでわかった。検査院は「国民のニーズを把握し、利用促進を図る必要がある」と指摘した。

 同年度の申請総数4億6640万件のうち、電子申請分は0.94%の440万件。「汎用」は0.02%、「専用」は5.57%にとどまった。年間通して申請が無かった手続き数は、汎用では総手続きの半数を超す6716で、専用が全体の2割強の338に上った。

 赤字部分について、原典を当たってみよう。各府省等におけるコンピュータシステムに関する会計検査の結果について会計検査院 18年10月25日)の<概要>(PDF・約324 KB)の 5/12ページ。

 それによれば、電子申請システムが対象とする手続きの半分は、電子申請も書面申請も全くない手続だという。

○ 電子申請等関係システムの利用可能手続(16年度)*2

16年度末現在における電子申請可能な手続数(A) 左のうち、16年度中に、電子申請も書面申請も全くなかった手続数(B) (B)/(A)
14,225手続 7,054手続 49.6%

○ 電子申請等関係システムの利用状況(16年度)

電子申請可能な手続数 全申請件数(A) うち電子申請数(B) 電子申請率 (B)/(A)
14,225手続 466,410 4,414 0.94%

 高速道路や、新幹線・新幹線新駅(栗東市南びわ湖駅(仮称))の建設問題は、需要予測をどう読むかが問題になる。

 一方、電子申請システムが対象とする手続きの半分は、紙の申請も含めて、需要が、ない、ゼロ なのである。電子申請システムは、申請件数が特に多い手続きに関する事務の自動化は必要だろう。しかし、紙の申請さえ年間0件の手続きを電子申請システムに乗せたところで、どこに合理化効果があるのだろう。これって、ITメタボリック症候群

 先ほどの「各府省等におけるコンピュータシステムに関する会計検査の結果について」の<全文>(PDF・約4,917KB)、45/153ページから。

 全申請件数が0件の手続が汎用システムの手続総数の相当数を占めている背景には、e-Japan重点計画等において、「国民等と行政との間の実質的にすべての申請・届出等手続を、2003年度までのできる限り早期にインターネット等で行えるようにする」とされたことなどを受け、各省庁が、原則としてすべての手続をオンライン化してきたことがある。
 一方、各専用システムで受け付けることができる手続については、16年度の全申請件数が0件の手続は全体の23.7%、1件以上50件以下の手続を含めると50%以上を占めている。

*1:予算執行調査16.旅券発給関連経費(電子申請システム運営経費)」平成18年7月4日外務省主計局

*2:原典にある「汎用システム」と「専用システム」とを、ここでは合算している。