投票アンケートは、世論ではない。
毎日新聞社による投票アンケートに関して「『連載で報告する結果』はどうするのだろう?」とd:id:hottokei:20060103で注目していたが、その中間結果が出た。
縦並び社会・格差の現場から:中間集計から 1月6日
毎日新聞朝刊で掲載している連載「縦並び社会」のアンケートには、連日多数の回答が寄せられている。格差を巡る問題への関心の高さをうかがわせるとともに、今後議論していくうえでの手がかりも示す。中間集計結果(6日午後4時現在)を報告する。
アンケートにはインターネット、ファクス、郵便で計1万8071件の回答があった。最も多かったのは、年金不安から海外に移住する人々を取り上げた「年金移民」に関する質問。老後になって生活費が不足した場合の対応について4032件の回答があり、「物価の安い国に移住する」が58%で、「生活を切り詰めて国内で暮らす」を上回った。
次いで関心が高かったのが、…(以下略)
格差、低賃金労働、年金などごとに投票数の高低に差ができることにより「関心の高さをうかがわせる」ことになる、ということは、確かにそうである。
それによると、年金に関する投票がもっとも多かったという反応。新聞読者が高齢寄りという可能性がないか。*1
ところで、ネット、fax、郵便の投票を足したもの結果、意見の構成比率は、無作為に標本を抽出したいわゆる世論調査とは異なるものである。この点については留意すべきであるが、記事では何ら言及がされていない。
この投票アンケートについて、山田昌弘東京学芸大教授のコメントを載せており、そこでもこの点の留保が欠落している。
アンケート結果は、格差の拡大に対する国民の強い不安をうかがわせており興味深い。
(中略)
起業に関する設問では、「起業してみたい」が「起業は考えていない」とほぼきっ抗している。従来のようにコツコツ働くことが美徳とされた社会が変容していることをうかがわせる。
数字の上で「きっ抗している」ことが、世論なのかどうかは留保せざるを得ない。山田教授自身も無前提にこの数字を受け入れたのか、あるいは山田教授は留保を置いたのに記事編集上それを削除したのか。
どちらにしても、回答バイアスについて全く留保のない投票アンケートは、いただけない。d:id:hottokei:20050208
*1:インターネット、ファクス、郵便の内訳があると多少なりともそのヒントになるのだが、それは書いていない。ちなみに、NHKはスキウタ最終データ発表において投票ハガキ、携帯電話、パソコン、データ放送の4媒体ごとに投票数を公開している。これは親切。