「研究費をもっと出せ」という結論しか残らない、研究費補助

 一昨年、8月26日に触れた「研究費は、泥棒に追い銭 - 厚労省代替医療研究班 - 繰り言」の結論。

結論:
 統合医療の安全性、有効性、経済性等に関する評価は、基本的にはEBMの手法で評価しうるが、更なる工夫・開発が必要である。わが国での情報提供、専門医養成、国家的推進策について、インドや中国、韓国から学ぶ点は多い。

 研究の結論は、普通、このような工夫・開発をして、世の中をこう良くすることができるようになる、ということではないだろうか。

 むしろ、こちらの「結果と考察」で示されている統合医療なるものの正体の方が、腑に落ちる。いや、語るに落ちている。

国民が統合医療を利用する際に参考とするのは「価格」が最も多く(58.9%)、「一般の人々の体験談」と「研究結果(データ)の提示」、「効果を示す文句」がそれぞれ40%弱であった。統合医療は、多くの国民にとって、医療というよりも一般消費財と捉えられているとも言えよう。

 以下は、「厚生労働科学研究成果データベース」でガラス張りにされている1200万円が投じられた成果。今の時点では概要版であり、最終的な「研究報告書」は依然として出ていない。

 iPS細胞詐欺騒動で執拗にも意味のない取材をしたマスコミには、そのエネルギーの100分の1でいいから、この「研究」のフォローをお願いしたい。

  • 研究課題

統合医療の情報発信等の在り方に関する調査研究

  • 研究年度

平成22(2010)年度

  • 報告書区分

総括

  • 主任研究者(所属機関)

福井次矢(聖路加国際病院)

  • 分担研究者(所属機関)

渥美和彦(一般社団法人日本統合医療学会)、
寺澤捷年(千葉メディカル中央センター)、
鈴木隆雄(独立行政法人国立長寿医療研究センター)、
山本精一郎(独立行政法人国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報・統計部)、
丸井英二(順天堂大学医学部 公衆衛生学教室)、
高橋理(聖路加国際病院 一般内科)

  • 研究区分

厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究

  • 開始年度

平成22(2010)年度

  • 終了予定年度

平成22(2010)年度

  • 研究費

12,285,000円

  • 研究目的:

統合医療(伝統医療および相補・代替医療)の、(1)安全性、有効性、経済性等についての評価のあり方、(2)国民への情報提供の実態調査およびそのあり方、について検討する。

  • 研究方法:

統合医療の評価方法の問題点については、過去に行われた研究報告書をレビューし、議論・検討した。情報提供の実態については、インターネット上での質問票調査を行った。外国(米国、インド、韓国)の状況については、文献調査、インターネットでの検索、関連機関・施設への訪問調査などを行った。

  • 結果と考察:
  1. 統合医療の安全性や有効性、経済性等に関する評価は、基本的にはEBMの手法が適用できるが、更なる工夫・開発が必要である。疾病や病態の概念(病態概念)が西洋医学と統合医学で異なる場合は、臨床試験の結果の解釈・臨床応用上、注意が必要である。
  2. 国民が統合医療を利用する際に参考とするのは「価格」が最も多く(58.9%)、「一般の人々の体験談」と「研究結果(データ)の提示」、「効果を示す文句」がそれぞれ40%弱であった。統合医療は、多くの国民にとって、医療というよりも一般消費財と捉えられているとも言えよう。
  3. 2001年?2009年の新聞記事中、統合医療関係の単語が扱われていた記事は年間平均118件(約10件/月)で、2008年、2009年は減少傾向を示していた。
  4. 統合医療の専門医の養成は、インドや中国、韓国のように医学部教育から西洋医学とは別のコースを設ける国と、米国のようにメディカルスクールを卒業した後、研究員(フェロー)を養成する国とがある。
  5. 米国Harvard Osher Research CenterでのFellowshipプログラムでは、臨床疫学や統計学など、臨床研究の方法論が教えられていて、統合医療の厳格な評価に貢献している。
  6. 米国NCCAMでは、一般国民向け、医療従事者向けの統合医療の情報提供が、、主としてインターネットを介して行われている。
  7. インドや中国、韓国では国家戦略のもと、統合医療を推進すべく、学術面、産業面での支援が行われている。
  • 結論:

統合医療の安全性、有効性、経済性等に関する評価は、基本的にはEBMの手法で評価しうるが、更なる工夫・開発が必要である。わが国での情報提供、専門医養成、国家的推進策について、インドや中国、韓国から学ぶ点は多い。