我が国の学術研究の水準の高さ
科学のノーベル賞を受ける人は、多くの場合、成果が十分に花が開いた研究の端緒を作った人に対して贈られるもの。今日のノーベル賞は、ふた昔、さん昔前のこと。
その意味で、政治家の言う「我が国の学術研究の水準の高さ」とは、過ぎ去った残像にすぎない。
山中伸弥教授は、将来、iPS細胞でノーベル賞を受けることになるかもしれない。
けれども、そんな日がもしあるとしたら、それは、実用化した万能細胞が世界中で医療技術として使われるようになってから。
そのためには、それをヒトに応用するブレイク・スルーをする誰かがいなければならない。
その誰かが、日本在住の日本人であるかどうか。
そんな保証は、どこにもない。
日本の科学関係者によって、これから、百万遍、十億回、引用されることになるだろう、総理コメントの最終パラグラフ。
政治家の言葉の軽さが、今ほど歯がゆいことはない。
本年のノーベル化学賞にパデュー大学 特待教授 根岸英一 氏および北海道大学 名誉教授 鈴木章 氏が決定しました。
日本人として17人目と18人目の受賞であり、心からお慶び申し上げます。
今回の受賞は、有機合成化学分野における 根岸英一 先生および 鈴木章 先生の優れた業績が世界に認められたものであり、我が国の学術研究の水準の高さが国内外に示されたことを誇りに思っています。
日本にとっても大変明るいニュースであり、また、若い学生や研究者に大きな夢を与えていただき、根岸英一 先生および 鈴木章 先生には、心から敬意を表したいと思います。
この受賞を契機に、我が国は、大学や研究機関の教育力・研究力を強化するなど、世界に貢献する日本を目指して、一層努力してまいります。
平成22年10月6日
内閣総理大臣 菅直人
科学の成果を、費用対効果で評価しようとすることが横行しているが、クロスカップリング反応の特許を出願しなかった鈴木氏は、収入より世界的な普及喜んだという。
日経電子版から。
鈴木氏、特許出願せず 収入より世界的な普及を喜ぶ
「特許を取っていたら巨額の収入があったのでは」。鈴木氏は講演のたびに質問される。しかし決まって「特許があったなら、これだけ普及することはなかった」と答える。