生放送ラジオ番組の行間を、読む。
以下に続く文章は、私の記憶に基づくものであり、実際の放送とは異なる部分が多々存在していることがあります、そのことをお詫びします。
(その文章が言及しているラジオ放送内容のポッドキャストをTBSラジオが公開していることに気がつきました。ポッドキャストを聞いてみたら、宇多丸が言ってもいないことをさも事実のように存在しているかのようになっています。
でも、あえて、こんな風に聞かせてくれるのが、暗い部屋の寝床で聴くラジオの醍醐味なんだ、と...(弁解にもならない...ますます誤解を招く...))
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TBSラジオ5月2日放送「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」、時刻は0時を回り、日付は3日に。
0時台のコーナー、「ご機嫌いかがですか?ミューズのぼんやり情報部」で、ギャラクシー賞を受賞した宇多丸は、レギュラーのしまおまほ(女性)にいきなり絡んだ。
ギャラクシー賞取ったんだから、抱かせろ。
もしこの台詞が、宮川賢がバツラジの中で若林史江に言っているのだとしたら、自然に理解できる。
しかし、これは、宇多丸の台詞である。
まして、この番組の直前のコーナー"タマフル・ティーン白書 2009"で、宇多丸は「13歳の女の子も聞いているんだ。」とシモ系のネタは自戒しようと言っていた直後であるにもかかわらず、である。
TBSラジオのヘビーリスナーならお気づきかと思うが、宇多丸の台詞にしては、明らかに変だ。
私が感じたこの引っかかりは、この回の「ぼんやり情報部」が早々に手じまいされ、宇多丸が読み上げる「ニュース速報」により、解消されることになる。
宇多丸のさきほどの台詞は、ともすればメインパーソナリティの職権を濫用したセクハラに他ならないのはずだった。
しかし、そうではなく、宇多丸の意図は「愛し合ってるかーい」だったのだ。
宇多丸は、自身の生を確認し、性の衝動にも駆られながら、(後になって振り返れば上の空のままに)「ぼんやり情報部」を終わらせた。
そんな宇多丸には、ガラス向こうのサブ(副調整室)から「そのニュース速報を宇多丸さんから読んでほしい」という無情なリクエストが。
思わず動揺し、
こんなニュース速報を俺が生で読む羽目になるなんて。
「羽目(はめ)」なんて、そんな乱暴な言葉も、放送局のマイクの前の宇多丸が口にするとは異例。
そして、宇多丸は、ニュース速報の原稿を淡々と読む。
訃報です。
忌野清志郎さんが(以下略)
原稿の後に短いコメントを述べてから、曲がかけられた。
雨あがりの夜空に35 / 忌野清志郎 feat. RHYMESTER
曲の後、宇多丸は、
清志郎とは自身が十代からのスターであったこと
清志郎の方からから35周年コラボの申し出を受けてうれしかったこと
そのときのレコーディング作業で
清志郎さんの方から
「もっと清志郎のイメージを壊してくれよ。」
と、先輩目線ではなく、仲間に言うようにフランクに言ってくれたこと
新大阪の新幹線ホームで清志郎が声をかけてくれたほんの数日後に清志郎の最初の闘病が始まったこと
そして、路上に偶然見つけた宇多丸に、退院途上の清志郎が車のスピードを緩めて声をかけてくれたこと
を偲んで
もう他に言うことはありません。
忌野清志郎を知らない人がいたら、この曲を聴けばこの人がどんなにすごい人かということがわかります。
と、その回の番組最後の曲につないだ。
今まで聞いてきたラジオで、こんなに抱きしめたくなる生放送の瞬間はあっただろうか。
第46回ギャラクシー賞ラジオ部門DJパーソナリティ賞を受賞した宇多丸の、放送の極み、であった。