数学ボケとエレガントなツッコミ
今朝の日経 内外時評「果実をむさぼる前に - 文化としての科学を育てよ」(論説委員 塩谷喜雄)から。
世に出て役に立たないという理由で三角関数を軽んじるといった風潮が、日本の科学文化の成熟をずっと遅らせてきた。…(中略)… 科学を知らないことが、柔軟なみずみずしい思考の源泉であるかのような錯覚がまん延する社会で、新技術やノーベル賞など果実ばかりほしがっても徒労だろう。
「三角関数を軽んじるといった風潮」。これが具体的にどのようなエピソードを指しているのか筆者には不明であるが、二次方程式に関するこんなボケが過去あったことは覚えている。
曾野綾子のように「私は2次方程式もろくにできないけれども、65歳になる今日まで全然不自由しなかった」という数学嫌いの委員を半数以上含めて数学の教科内容の厳選を行う必要がある。」
このことについて、こんなエレガントなツッコミがある。
私は53歳になる今日まで曾野綾子の文章も三浦朱門の文章も一行も読んだことはなく、そのことで生活に何の不便も感じたことはない。
だからといって、それだけの理由で、彼らの文章を初等・中等教育の教科書に取り上げる必要がないと主張すれば暴言の誹りは免れない。初等・中等教育に相応しい文章であるかないかは、教科書作成の際に判断すればよいことである。
「数学つれづれ草 2次方程式」(上野健爾「数学のたのしみ」(日本評論社No.9 1998年10月10日号 160-163頁)。