朝日新聞アエラ データは真実か
電車の中吊り広告や、雑誌の表紙は、
東大生の6割は美人である
と断定文。
実際の雑誌の記事。
その見出しは、
東大生の6割 美人は真実か
と疑問文。
記事本文の頭に置かれた導入は、
最近の東大女子は6割が美人という説もある。
と伝聞文である。
さて、記事本文には...「6割」について説明する記述は、見られなかった。
あるのは記事中の囲み記事である「コラムニスト・辛酸なめ子さんに聞く」の中に、
2003年から3年連続で東大の入学式を見に行きました。
…6割がかわいくて、4割がモッサリ。6割のうち1割は目を引く美人でした。
と、ある。
で。
なに?
この辛酸なめ子説を採用するにしても(もともと思いこみの激しい氏の説を引用すること自体、躊躇を覚えないわけではない)、美人1割であり、6割はあくまで「かわいい」に過ぎない。
アエラの記事本体は、外部ライターではなく、編集部 木村恵子により書かれたものである。
彼女の記事本文には、繰り返すが「6割」という割合はない。その代わりに記事では、
学歴と容姿は比例する -。
”東大女子美人説”を裏付けるデータがある。
と主張する。
その根拠は光文社新書「下流社会」*1の著者 三浦展による調査である。
「首都圏在住の18歳才から37歳までの600人の女性」を対象とするこの調査(調査方法はこれ以外には明らかにされてない)から得られた「学歴が上がるにつれて容姿の自信度もアップしている」という分析から、記事はこう綴る。
この結果に従えば、最高学府東大は美人が高くて当然、と三浦さんは言う。
既卒女性の場合、高学歴であればあるほど、本人又は配偶者*2により収入が高く、その分、化粧、美容、衣装等、容姿に関わる消費もできよう。しかし、この調査の結果を、東大女子という基本的に未就労者、未婚者に当てはめることは、論理の飛躍である。
同じ三浦調査で、購読する雑誌について尋ねた設問をもとに、このように分析をしている。
この調査で、若い女性のファッションバイブル「CanCam」を読んでいる人の割合は全体の13.5%。だが、「ダイヤモンド」や「プレジデント」などの経済誌読者における「CamCan」の読者率は、全体を母数にした場合を上回る約3割に上った。つまり、経済など硬派ニュースに関心がある人は、ファッションにも興味がある。
果たしてそうだろうか。
標本の中には雑誌をもともと読まないという層が一定数含まれることが考えられる。雑誌を読む者に絞った「CanCam」読者割合と、経済誌読者に絞った「CanCam」読者割合とで比較するべきものではないか。
また、女性向けファッション誌はいくらでもあるのに、ファッションに興味があるかを18-37歳女性に対して「CanCam」購読だけで計ることを行うことが適切かどうかもよくわからない。経済誌購読については、『「ダイヤモンド」や「プレジデント」など』と複数雑誌を対象としているのに。
ジャンルを問わず総じて意欲・関心が高い層、これこそが最近の東大女子の層と重なるといういうのだ。
「いうのだ」と、三浦氏からの伝聞の体裁を取っているが、「経済誌」→「硬派ニュース」→「意欲・関心が高い層」→「東大女子」という論理を記事上で展開する木村氏には、さしもの辛酸なめ子氏もたじろぐのではないだろうか。
アエラ記事では話題の切り口を、学歴だけでなく、東大に師弟が入学する家庭の富裕度にも求めているが、これには数字を用いず、女学生インタビューという事例紹介に終始。
人目を惹く広告の見出しや表紙による「見かけ倒し」手法は、スポーツ夕刊紙の専売特許かと思っていたら、アエラもその仲間入りを果たしたようである。
ダジャレなら罪はないが、これでは見識を疑う。もっとも、Hatena Diary Keywordでアエラを引くと、
昔はニュース週刊誌だったが、今は小ネタ週刊誌と化している。
とあり、納得する。ネタ本に目くじらを立てても徒労感を覚えるだけ。