そんなに法律が欲しいのか?新聞

 何でも法律に頼るのはいかがなものだろうか。Yomiuri Online 4月12日から。

自民党、新聞特殊指定で議員立法の検討チーム設置

 自民党は12日、新聞の同一紙・全国同一価格での販売などを定めた「特殊指定」の撤廃を公正取引委員会が検討している問題で、新聞の戸別配達網の維持や、国民の「知る権利」の保障のための新たな議員立法の検討チーム(高市早苗座長)を、党新聞販売懇話会(会長代行・中川政調会長)の下に設置した。

 公取委独占禁止法に基づく告示で定めた特殊指定の枠組みとは別の法的な枠組みを作り、公取委に対抗するもので、早ければ今国会での法案提出・成立を目指す。

公正取引委員会の言い分は,特殊指定見直しに関するQ&Aにある。

答6 新聞については著作物再販制度の対象となっていることから、新聞発行本社と販売店と間の再販契約により、販売店は定価からの値引販売を禁止されています。したがって、新聞発行本社が、販売店間の価格競争を回避させたいのであれば、契約違反とすることによって定価販売を維持させることができるのです(ただし、再販契約を守らない販売店を放置しておくのも新聞発行本社の任意と言えます。)。

 制度を所管する役所によれば,新聞は特殊指定の有無以前に著作物再販制度の対象である,としている。

 特殊指定の有無により生じる違いは,値引販売禁止の根拠が変わってくると言うこと。

 値引販売禁止の根拠は,特殊指定がある場合は国の告示に由来するのに対して,特殊指定がなくなってしまうと新聞発行本社と販売店との間の契約(再販契約)に基づくものになる。

 もともと新聞は著作物再販制度の下にあるにもかかわらず,それにかぶせる形で特殊指定告示が出されてしまっており,過剰な,まさに,特殊な状況におかれている,と見ることができる。

 d:id:hottokei:20050227#2 でメモった疑問,新聞料金は自動引き落としにしても料金割引制度がないのはなぜ,ということについて,公取委の Q&A がその理由を明かしている。新聞業界が特殊指定を傘にしているのだという。

 一方,日本新聞協会の「新聞特殊指定」の堅持を求める特別決議を採択には,以下の説が流されている。

新聞特殊指定の堅持を求める特別決議
平成18年3月15日
日本新聞協会第83回会員総会

新聞販売店による定価割引の禁止を定めた特殊指定は再販制度と一体であり、その見直しは再販制度を骨抜きにする。販売店の価格競争は配達区域を混乱させ、戸別配達網を崩壊に向かわせる。その結果、多様な新聞を選択できるという読者・国民の機会均等を失わせることにつながる。

 特殊指定見直しは再販制度を骨抜きにする,という主張は公取委の Q&A とは噛み合っていない。

 価格競争に陥らないための値引販売禁止は、新聞発行本社と販売店との間で結ぶのであれば、引き続き維持できるのである。そのような再販契約は、一般の商取引では、独占禁止法が禁止行為とする「不公正な取引方法」に当たるが、著作物再販制度のものとある新聞については、違法に問われることはない。

 新聞協会は論理を飛躍させることなく説明責任を果たして欲しい。2001年に決定された著作物再販制度の存続が「当面の存続」を認める*1に過ぎないということが不安であるなら、そのこと自体を指摘するべきである。