「教員調査」 標本の5割は、江東区公立教師

 NIKKEI NET12月6日から

教員の6割、新規採用で縁故「有利」・内閣府調査

 内閣府は5日、教員の採用方法に関するアンケート調査結果を発表した。教育委員会や学校関係者に身内がいる場合、新規採用が「有利に働く」と答えた教員は23.5%。「多少有利に働く」(35.4%)も含め、6割近くが有利との認識を示した。一方、市区の教育委員会は同じ質問に0.4%が「有利に働く」、5.5%が「多少有利に働く」と答えるにとどまっており、現状認識に大きな隔たりがあった。

 調査は全国の都道府県や市区の教育委員会と学校法人の採用担当者を対象に、9月12日から10月21日に実施。回答率は60%。教員は東京都江東区の公立小中学校などから2835人を無作為抽出し、回収率は9.2%だった。

 教員は「東京都江東区の公立小中学校など」から抽出?回収率は9.2%?

 ソースは、内閣府の、規制改革・民間開放推進会議の調査。教育委員会・学校法人、および教員アンケート(内閣府実施)(平成17年12月5日)

 このソースの「調査実施概要」によれば、

■ 参考:教員アンケート実施概要
• 教員の採用に関する実態を教員の視点から把握する。
• 東京都江東区の公立の小学校(43校)、中学校(22校)から、約半数にあたる小学校(22校)、中学校(11校)を無作為に抽出して調査票を送付し各校の全教員に配布した。各教員からは、郵送にて直接調査票を回収した。
また、英語教材製作会社の会員リスト(英語教員が全国的に登録)をもとに、調査票を送付し、郵送にて回収した。

        送付数  回収数  回収率(%)
江東区教員計  652 129 19.8
 小学校    437 92 21.1
 中学校    215 37 17.2
全国英語教員計 2183 131 6.0
全体      2835 260 9.2

 ここまで調査の概要をきっちり紹介する姿勢は評価するが、標本調査としてフェアだろうか。

 同じソースでは、標本教員の都道府県別比率の表を掲げている。この表、実は軽微な間違いがあるように思えるが、私の責任でこれを検算の上、比率を実数に焼き直した表を以下に掲げる。

N 北海道 青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県 東京都 神奈川 埼玉県 千葉県 茨城県 栃木県 群馬県 山梨県 新潟県
全体 260 10 1 1 3 2 3 2 147 7 4 5 6 3 2 1 1
うち江東区教員計 129 129
小学校 92 92
中学校 37 37
長野県 富山県 石川県 福井県 愛知県 岐阜県 静岡県 三重県 大阪府 兵庫県 京都府 滋賀県 奈良県 和歌山 鳥取県 島根県
全体 2 1 2 2 4 4 5 3 6 1 5 1 2 1
岡山県 広島県 山口県 徳島県 愛媛県 高知県 福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島 沖縄県 無回答
全体 6 2 2 1 2 2 2 3 1 1 1

 日本の教師の標本、260人中、東京都の教員が147人(57%)、うち、江東区の公立教員が129人(50%)を占めている。

 ちなみに、文部科学省学校基本調査平成17年速報によると、全国の小中学校の教員数(公私計)は、665,477人。うち、東京都の教員数は48,080(7.2%)に過ぎない。

 もとより、この教員調査の回収率は1割に満たない。全21問の設問欄を埋めて回答してくれた標本は、母集団を代表していると言えるだろうか。

 そして、私が懸念することは、この「調査結果」が、今後、政府の政策立案に基礎資料として大手を振って使われることがあったとしたら...ということである。