三度、選挙に関するネット調査

 日経の衆院選ネット調査の第4回が11日の衆院選を明けてから実施され、その結果が14日の紙面に。第1・2回の時にはあって、第3回の時にはなかった、調査方法の説明(紙面上。ウェブ上にはない)が、この第4回で復活。

 第4回の紙面から引用。id:hottokei:20050910の第1・2回と比べると、後退してます。もっとも、紙面編集効率上、一度書いたことを繰り返し同量で載せるのは難しいと思います。それを差し引いても、〈調査の概要〉というコーナーを設けているにもかかわらず第4回回収率を明らかにしていないのは隠蔽というそしりを免れないだろう。

〈調査の概要〉衆院選ネット調査は、日経リサーチが保有するインターネット調査の全国の協力モニター約七万人から男女別、年齢階層別に成人に千人を無作為抽出して実施した。対象者に協力を依頼し、指定のウェブ画面上の質問に回答してもらう方式をとった。回答者は電話調査方式に比べて都市部、若年層、男性の比率が高い傾向がある。
 第一回は八月二十四−二十六日、第二回は三十一日ー九月二日、第三回は九月六−八日、第四回は十二−十三日に実施。四回とも同じモニターに継続して回答してもらう方式を採用した。

 ネット調査の結果を解釈する姿勢はどうだったであろうか。第1・2回のネット調査では、

 ネット調査は回答者に偏りがあり、全国の有権者の縮図といえるデータ標本とは必ずしもいえない。…ただ衆院選への有権者の関心の高さや無党派層の投票行動の変化などを連続的に把握するのには適した面がある。

と自己規定していたが、第3回では、それが必ずしも遵守されていなかった。

 第4回では、内閣支持率政党支持率、投票で重視する政策といった調査事項に関して、それら結果数字の変化を記事で述べている。

 しかし、「小泉政権が優先して取り組むべき外交テーマ」という、投票前には設定することが不可能な調査事項に関する結果にも触れている。日経が第1・2回の〈調査の概要〉で自ら宣言しているように、偏ったサンプルの一時点(今回の第4回)の考えを取ってもそれが世論一般を代表していると肯定するのは難しい。そもそも、衆院選前には不可能な事項を調査する行為は、有権者の考え方を連続把握するという調査趣旨を踏み外している。

 まして、「自民が二百九十六議席(四百八十中)と圧勝した結果をどう受け止めるか」という調査事項に至っては、その結果を、回収率、無回答比率抜きに、理解することはできないが、それらの数字は紙面には出ていない。単純化しすぎるのも問題だが、選挙結果に満足に思ったりそう思わなかったりしたりする調査対象者は、公正な回答行動(拒否せず、誠実に回答する)を取ってくれたかどうか、検証しなければどうしようもない。


 読売新聞は、「衆院選ネットモニター」(ホーム>総選挙2005>企画・連載>衆院選ネットモニター)という名前で実施。

 ウェブ検索すると、去年も一昨年も実施していたらしい。

 衆院選ネットモニターの調査方法について抜き書きすると、

http://www.yomiuri.co.jp/election2005/feature/netmonitor/netmonitor_01.pdf
衆院選ネットモニター](第1回調査)
・調査日:8月19日(金)〜8月23日(火)
・対象者:ネットモニター登録者1000人
・有効回答:929人(回収率92.9%)

【ネットモニター調査】読売新聞社が8日の衆院解散直後に募集し、男女比、地域バランスを考慮して1000人にモニターを委嘱した。回答はインターネットで行い、衆院選直後まで調査する。第1回調査は19〜23日に実施し、回答率は93%。


http://www.yomiuri.co.jp/election2005/feature/netmonitor/netmonitor_02.pdf
衆院選ネットモニター](第2回調査)
・調査日:8月30日(火)〜9月2日(金)
・対象者:ネットモニター登録者1000人
・有効回答:932人(回収率93.2%)

【ネットモニター調査】読売新聞社衆院解散直後の8月に募集し、応募のあった中から男女比や地域バランスなどを考慮して1000人にモニターを委嘱した。平均年齢は43・5歳。第2回調査は、8月30日から9月2日まで実施し、93%が回答した。調査結果は読売新聞のホームページでも紹介する。

 回収率が93%超とは、モニター応募から間がないとはいえ、その高さには目を見張る。

 読売の場合は、目的を衆院選に絞って新聞読者に直接公募をかけている。モニター調査一般の偏りに加え、この意味で、特に読売新聞固有の読者層の偏りということも念頭に置いて理解すべきだろう。

 この読売の調査の場合、モニター調査であることが調査名で明らかにしているという点では、良心的。もっとも、その結果を分析する姿勢は日経には及ばず、ネット調査由来の限界に関して注意を払っている様子が記事にはない。

 調査に協力しているという政治心理学の川上和久明治学院大法学部長は、調査コメントのその第2回では、一時点の結果よりも結果の変化に配慮しているように見受けられるが、であればなおのこと、ネット調査の留意点をどこかで触れて欲しいものである。それが、学者の良心では。