72時間サバイバル
東京メトロの神保町駅で地上に出たら、千代田区が2つの地図を貼りだしていて、区民には避難所案内図を、通勤・通学者等には帰宅困難者支援場所案内図を、それぞれ示していた。
意識していなかったのだが、東京都は、千代田区の全域を「避難を要しない地区内残留地区」と指定していたのだ。それを受けて、千代田区は、区内の広域避難場所、一時集合場所の設定を解除しているのだという。
千代田区地域防災計画(概要版)(平成16年9月)によると、
区民、事業所の皆さんは「千代田区では避難は最後の手段」であることをよく理解しておいて下さい。
(上で、太字は筆者による。以下同様)
と、重い自覚を請うている。
区は、避難所を必要な時に開設するといい、そうであっても
ただし、危険を感じた場合は、一時的に区指定避難所((2) r参照)に避難して下さい。
という。
都心の区役所のウェブサイトを訪ねると、防災上の提供に関する力の入れ具合の濃淡が浮かび上がってくる。力が入っている区の記述を見てみると、けっこう標準化されている。その典型例として、この「地域防災計画」からいくつか引用すると、地域行政として今の対応能力を大変率直に述べており、翻って一人一人には自助努力を強く求めている。
大地震等で交通機能が停止した場合、すぐ自宅に帰ることができない人々を「帰宅困難者」と言いますが、千代田区では約60万人発生すると予想されています。区の行政能力では全ての帰宅困難者に対応することは不可能だと考えられています。
区の帰宅困難者支援策には限界があることをご理解いただき、下記のような自助努力をお願い致します。.
帰宅困難者については、千代田区の「大地震を乗り切る職場の72時間サバイバル計画」-「STEP 2 地震が起きたら、むやみに動かないのが原則です」において
最悪の事態として防災機関など外部からの救援が3日間期待できないと考えて準備をしましょう。
食 料
事業所や家庭に腐らない食料を少なくとも3日分備蓄されていますか。
と、迫っている。
72時間のシナリオは、「新宿区における帰宅困難者対策報告書〜大震災時における徒歩帰宅困難者の現状と対策〜」(新宿帰宅困難者対策推進協議会平成16年3月)にある「ターミナル駅周辺で予想される事態」(このPDFの3枚目)が興味深い。
ターミナル駅周辺で予想される事態
平日の夕方に、都の被害想定規模の大地震が発生した場合において、区外から訪れている者の行動や、道路・交通状況を時間経過に沿って予想した。
- 発生直後(冬の午後6時)
…情報や保護を求めて、駅周辺や公共施設等へ殺到・滞留することが予想される。
- 発災後12時間まで
情報が長時間提供されない場合、デマ情報等により混乱状態になることが考えられ、二次災害につながる可能性が高い。
幹線道路は多くの人で混雑・混乱
近隣の避難所に宿泊を求めてくる者が多数発生することも
- 発災後12時間〜24時間
鉄道機関のうち、地上路線はまだ復旧の見込みがたたず、駅周辺や事業所等で一夜を明かした帰宅困難者の多くが、徒歩帰宅を決心して行動を始めることが予想される。
地下鉄の一部路線については、特定区間の折返し運転が再開される可能性が高いが、速度制限や間引き運転等により、平常時の輸送能力は確保できない。
区内での幹線道路沿いの延焼火災は沈静化したが、多摩地域や神奈川県方面の沿道では収まっておらず、徒歩帰宅やバス等による代替輸送が寸断されている地域が残っている。
- 発災後24時間〜48時間
会社や学校で様子を見ていた帰宅困難者や、付近の避難所や臨時に提供された休憩所等にいた帰宅者の多くが徒歩帰宅を始める。緊急交通路は、救援車両等で激しい渋滞が続いており、バスによる代替輸送がスムーズに進んでいない。
- 発災後48時間以降
幹線道路の延焼火災は、発災から48時間後に一部地域を除いて沈静化した。
地下鉄は、復旧する路線・区間が増え、輸送力が回復してきた・帰宅困難者の多くが、地下鉄を乗り継ぎながら行ける場所まで移動している。
防災情報の提供に真剣さが足りないのが、銀座、築地、月島などを擁する中央区。「事業所防災マニュアル」を希望の事業所に配布するとしているが、正直かつ誠実に
※在庫切れ。(ご希望の方には、コピーしたものを配布します)
と付け加えている(コピーを受け取るにはどうしてよいのかまでは書いていない。)
中央区には、港区がやっているように、スキャナで画像取り込みしてPDFにする知恵くらいないのか。