AERA朝日新聞社)「非正社員切り捨てで失業率「改善」のまやかし」によると、


 5%台で高止まりしていた完全失業率が、今年に入って3年ぶりに4%台に回復している。

 しかし、失業給付など正社員を前提とする保護の仕組みは派遣社員契約社員らに対して十分に機能しているとはいえず、セーフティーネットからこぼれ落ちる非正社員たちが増えている。

 「『完全失業』は正社員の特権ですよ。かけもちパートは常に不完全失業の状態に置かれている」
 この記事は、労働力調査総務省統計局による標本調査)と失業給付(厚生労働省ハローワーク雇用保険の被保険者が受けるもの)を混同している節がある。

 完全失業率の情報源である労働力調査は、完全失業率の3条件

1)仕事がなくて調査週間中に少しも仕事をしなかった(就業者ではない)
2)仕事があればすぐ就くことができる
3)調査期間中に,仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた(過去の求職活動の結果を待っている場合を含む)

によっており、これは 国際労働機関 ILOによる基準に基づくもの*1

Unemployment

10. (1) The "unemployed" comprise all persons above a specified age who during the reference period were:
(a) "without work", i.e. were not in paid employment or self-employment as defined in paragraph 9;
(b) "currently available for work", i.e. were available for paid employment or self-employment during the reference period;
and
(c) "seeking work", i.e. had taken specific steps in a specified recent period to seek paid employment or self-employment. The specific steps may include registration at a public or private employment exchange; application to employers; checking at worksites, farms, factory gates, market or other assembly places; placing or answering newspaper advertisements; seeking assistance of friends or relatives; looking for land, building, machinery or equipment to establish own enterprise; arranging for financial resources; applying for permits and licences, etc.

 統計調査が意図的にまやかしを行うものではない。

 しかしながら、この記事が紹介するような、大学の非常勤講師といった「こま切れかけもちパート」という1カ所あたりの勤務日数が少なく雇用保険社会保険に加入できない労働者や、所属下の派遣会社から紹介された仕事を断ってから離職すると「自己都合」扱いとされる派遣社員というのは、ILOのシンプルな3基準だけではカバーしきれないものがある。

 労働力調査では、非労働力のうち、「適当な仕事がありそうにない」ことを理由に職を求めようとしていない求職意欲喪失者(Discouraged Worker)について、労働力調査詳細結果(3ヶ月ごとに発表)によりカバーしている。

 しかし、AERAの記事が最後に述べている

働き方の多様化とともに、労働者とはなにかという「労働者性」は、産業界と労働界の間で世界的にも論争となっている。工場労働を前提につくられた労働時間や休暇の管理、解雇規制といった労働者保護法制を今後も維持すべきかどうかは、正社員でない働き方を選んだ人の処遇とも深くかかわる問題だ。

は、就業者の中でその割合を拡大している非正規労働の扱いの点から、労働力統計に新たな課題を投げかけている。