大卒予定者就職内定率に関する2つの統計
日経4月2日(金) マーケット総合2面 大機小機「疑問のある就職内定率調査」は、厚生労働省・文部科学省による全国調査と、千葉労働局(厚生労働省)による千葉県内調査の2つのデータを見比べて、統計にゆがみがないかを検証できるように調査方法を明らかにするように求めている。
平成21年度大学等卒業予定者の就職内定状況調査(平成21年10月1日現在)について |報道発表資料|厚生労働省
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/22/03/1291440.htm
それぞれの役所の報道発表資料を基に、2月1日現在の大学の就職内定率、その調査方法を比較すると以下の通り。
- 厚労文科調査 80.0%(前年同期比 - 6.3%)
- 同調査中、「地域別就職内定状況」によれば、関東地区 82.6%(同 - 6.0%)
- 千葉労働局 57.8%(同 - 20.8%)
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- (調査方法に関する記載なし。なお、日経によれば、「県内すべての大学からヒアリングした結果だという。」)
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- (さらに、同記事によれば、「調査対象の卒業予定者の合計は2万3千人(大学院含む)である。」としている。一方、厚労文科調査の「大学」が大学院を含んでいるかどうかは、明らかではない。)
2つの調査の違いを整理すると、
- 厚労文科調査では、第一層の大学は抽出、第二層の(学内)学生は抽出の上「電話・面接等」
- 千葉労働局調査では、第一層の大学は全数、第二層の(学内)学生は調査方法はヒアリング(卒業予定者に対する「電話・面接等」なのか、就職部による業務データなのか、不明。)
大機小機では、以下のように論じている。
千葉県は首都圏にあるというのに、大学生の就職状況は全国平均とかけ離れて深刻だということになる。しかし昨年度の千葉県の就職状況は全国平均と大きな相違はない。
(中略)
昨年の全国の大学数は700以上、今春の卒業予定者は50万人をかなり超えるとみられることから考えると、サンプル数が少なすぎるのではないか。さらに私立大学の比重(全国では8割弱)が小さすぎるのではないか。
文科省では、過去の経験で全国推計値に大きなゆがみは観測されていないと説明しているが、今回もそうといえるのか。
結果のみの発表の仕方にも問題がある。影響力の大きい調査だけにサンプル調査の方法、実際のデータ、全国ベースへの拡張の方法論的根拠などを示す必要があろう。
調査に対する信頼性が究極的な問題であり、そのために、繰り返しになるが、調査方法について透明性を図り検証可能にすべきである。
その際、同一目的、同一基準時点で調査を行うのであれば、全国と地域の比較可能性、整合性について、考慮が必要である。第一層である大学の全数調査が事務として過重であるならば、大学の抽出に当たっては、いわゆる「優良大学」に偏ることのない留意すべきである。
調査の現場を想像すると、大学にとっても卒業予定者にとっても、自己にとってあまりうれしくない情報をそう喜んで報告するものではない。そのような中で、なるべく協力してもらえるように、また、正確性を期せる形での、調査段階における配慮が欠かせない。