原則禁止 日本の選挙運動を理解するためのキーワード

 都議選、衆院選挙が近づく中、日本の選挙運動ではインターネットは使えない、という事実は、外国記者の目から見ても、もはや新しい話ではなく、現代に生ける古典、の感がある。

 そんな中、選挙運動において、選挙カーでは連呼だけ、ということに光を当てたブログが注目されているようだ。

 その中の記述の一節。

選挙って、本当に馬鹿馬鹿しい: tak shonai's "Today's Crack" (今日の一撃)(庄内拓明の知のヴァーリトゥード 2009/05/28)

要するに公選法においては、原則として選挙運動というのはしちゃいけないことになっているのである。しちゃいけないけど、例外として、これこれのことはしてもいいよという構造になっていて(以下略)

 言い得て妙である。

 つまるところ、日本における選挙運動とは組織票を積み上げる方式で行われており、その立場から見れば、組織に属していない浮動票、無党派層を掘り起されるのは、迷惑この上ない。政治に対する世論喚起が、選挙運動によって行われることは、奨励されるものではなく、むしろ恐れられている。 「投票率は低い方がいい」という発言が、他ならぬ与党から出ることは、一度や二度ではない。

 公職選挙法における選挙運動関係規定は低投票率を実現するための法律による環境設定、と考えれば、理解しやすい。

 票田を継承する世襲制は、議員の選挙対策や相続対策*1にとっても、議員を支持する組織*2にとっても、もっとも経済的な仕組み。

 選挙運動の原則禁止は、世襲制を保護するのに、もっともらしい理屈と形式で選挙意欲を削(そ)ぐ雰囲気が醸し出してくれるので、効果的。


 選挙運動の原則禁止、非オープン化は、囲い込み戦略をもって競争力の源泉とする企業の経営戦略にも通じるものがある。

 結果、どうなっているか。

 ガラパゴス化

 そして、閉塞感。

*1:政治資金管理団体の名の下に、合法的に、無税相続が可能。

*2:当然、自組織への見返りを期待。