分かりやすく作るから、つまらなくなるテレビ

 JASRACシンポジウム 動画共有サイトに代表される新たな流通と著作権は、「日本のコンテンツ、ネットのせいで沈む」とホリプロ社長 (1/2) - ITmedia NEWSを読む限り、かなり刺激的だった模様。

BSやCSができたときや、キャプテンシステム音声多重放送など、新メディアが出てくるたび、『クリエイターの仕事が増えて引く手あまたになると言われたが、過去1回も、そんな経験はない

スポンサーは数字(視聴率)を求めるから、“分かりにくい番組”が淘汰される。分かりやすく作るからつまらなくなる

 テレビメディアは、民放局の広告付き無料放送。

 このビジネスモデルは、雑誌メディアの世界でも、フリーペーパーという形で浸透しつつある。イギリスや韓国では、新聞メディアでも同様のように聞く。すなわち、印刷メディア全体も、広告付き。

 現代のサービスは、個人の時間消費の争奪戦。その結果、個人が消費する時間を振り向けてもらうために、サービスを提供する側が個人にお金を払ってでも、というビジネスがアチコチで生まれつつある。

 結果、ただの砂糖菓子のような、滋味のないものがメディアにあふれる。

『こんな夢のない現場はない』と映像を作る人間もどんどん減っている。面白いから作る、というのがこれまでのテレビマンだったが、今のテレビ局は単なる就職先の1つで、きつければ辞めていく。人生を変えた番組も少なくなっているだろう

経産省の役人は『ハリウッドに日本文化を売りたい』と言うがそれは無理。ハリウッド映画の日本人役はアジア人であればよく、アジア人枠は1枠しかない。だが、日本のビジュアルバンドはウケていて、全米ツアーしているバンドもある。そういったマーケティングをなぜ、しないのか

 他人の土俵に乗り込んでいくよりも、自分の土俵を持てる人であれ。

ネット上の流通がコンテンツの『2次利用』にとどまる限り、国民にもメリットがないだろう。テレビがネットで見られるだけでなく、新しい利用形態を提案し、『ブロードバンドならあれが面白いよね』と言えるようなサービスを作らないと

テレビというあまりに成熟したビジネスモデルから逃れるために、たいへんなエネルギーが必要とされている

 広告がなくても、投げ銭をするという心持ちをすくい上げる装置が、必要。

 さて、振り返ってみよう。コンサート、舞台、音楽CD、iTunes、書籍、...。

 日本のNHKやイギリスのBBCは受信料を税のように徴収しようとするビジネスモデルであるが*1、寄付金制度の発達したアメリカの場合、NPR投げ銭である。

 The World Technology PodcastBBC World Service/PRI/WGBH)が PayPalで寄付募集を始めた。投げ銭をしようと思っている。

Keep The World's Tech Podcast in your earbuds!

*1:NHKの場合、公共放送であって、税による国営放送ではないはずであるが、最近の行政、国会、政党って影響力を与えていないと言えるのかぁ。この場合、おかしい!と声を上げるべきは受信料を支払っている者自身。行政指導は期待すべきでなく、むしろそれは、迷惑、害となって働く。政府以外の「公共」が存在しうるのかどうかの、試金石となる。