生物と無生物のあいだ (講談社現代新書、福岡伸一)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

 生化学の教科書を読んでいた時代に、副読本としてこの本のようなものと出会っていれば、もっと学習に身が入っただろうに。

 生化学の教科書は、聞こえのよい言い方をすれば体系的な記述だが、実際には、TCAサイクルのような「きれいな理論」が気持ち悪かった。たやすく文字で書いてある理論を、どうやって突き止めていったのか、もやもやした不思議な気持ち、いや、むしろ、不満を抱えたまま、講義を聴いていた。

 福岡氏の本書は、私の十数年来の不満を解消してくれた。

 サイモン・シンは、宇宙論、暗号、フェルマー予想といった科学を、紀元前から説き起こすシリーズを著している。本書は、それらと比べたらさすがにスケールは見劣りするが、人物群像の活写や遺伝子、細胞のメカニズムに対する比喩の筆致は、日本発の科学読み物も決して悪くはないと思わせてくれる。

 福岡氏は、J-wave Growing ReedTBSラジオサイエンス・サイトーク11月18/25日など、ラジオにも多数出演。