年金制度設計をはなから結論づけるという、愚

 国立社会報償・人口問題研究所のPopulation Projection for Japanを受けての首相の発言。12月21日のNikkei netから。

首相「年金制度自体の大幅見直し不要」・出生率下方修正で

 安倍晋三首相は20日、将来推計人口の見直しで出生率が一段と低下する見通しになったことに関し、「確かに数字としては厳しい数字だ」と感想を語った。年金制度への影響に関しては「すぐに年金が崩壊するわけではない。制度そのものは変える必要はない」と述べ、現行制度の大幅な見直しは不要との認識を示した。首相官邸で記者団に語った。

 同時に「出生率が下がらないように、ありとあらゆる機関で少子化対策を行っていきたい」と少子化対策に全力を挙げる姿勢を強調した。

 塩崎恭久官房長官も同日の記者会見で「年金が制度破綻をするようなことは全くあり得ない」と指摘。自民党中川昭一政調会長は同日、党本部で年金制度について「今まで政府・与党が国民に示し、約束してきた基本的なところは変わらない」と語った。

 将来人口推計に基づき、これから年金財政再計算の作業に入っていく。その手前で、「制度そのものは変える必要はない」と作業の出口を決めつける発言を総理自身がするのはいかがであろうか。

 将来人口推計の公表というタイミングは、賦課方式を改めて積立方式に切り替えるための観測気球上げ、のための絶好の機会になるものと期待していた。マスコミの一部でもそのような論壇はあった。しかし、来年の国政選挙をにらんで社会保障問題に関する火種を作りたくないという政権の都合のために、その機会はみすみす潰されてしまった。

 日本の現在の年金制度の前提になっている世代間扶助の賦課方式を押し進めようとしても、現役世代から引退世代への扶助がまかないきれないのは明らか。ならば、税金による財源手当が必要なのに、増税計画はおくびにも出さずむしろ社会保障費の膨張を抑えこもうとばかり。

 支離滅裂。