その「数式」の素

 数学の学び方小平邦彦岩波書店 1987)の「数学事始」(服部晶夫)の文章を引用させていただく。ここで、以下のアンケートの対象は、東京大学の学部2年生であり、3年からは数学、物理、情報の各学科へ進むことが内定している人たち。

「これまでに学んだ定理や理論の中で特に興味を持ったもの」についての問があった。それに対する答は案外少く(ママ)、また、答はまちまちであった。その中で、等式
 e^iθ = cosθ + isinθ
に非常に驚いた、それを見て美しいと思ったという趣旨の回答が2通含まれていた。筆者自身の経験に照らしてみて、この感覚はごく自然なものだと思われる。このようなきっかけが重なって、人は次第に数学に引き入れられていく。

 θ=πとすれば、上述の博士が愛した数式となる。