小柴プロジェクトと和田プロジェクト

 http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009615920040526022.htmから。

 衆議院文部科学委員会にて、ニュートリノ検出の小柴昌俊先生と、ヒトゲノム解析の和田昭允先生が、加藤紘一氏らに答える。

 そこで和田先生が開陳した、2つのプロジェクトの共通点と違い。

小柴プロジェクトと和田プロジェクトの共通点

  • 我が国のハイテクの優位をフルに使って世界の先頭を切ろう
  • 我が国にあるすぐれたものをどんどん使ってほかの分野においても先頭を切ろう


小柴プロジェクトと和田プロジェクトが非常に明確に明暗を分けた点

  • 国家予算の投資メカニズム

小柴プロジェクト 文部科学省予算
和田プロジェクト 科学技術庁振興調整費

 文部省管下の大学にはじかに落とせないということで理化学研究所を受け皿とし、また、科学技術庁の振興調整費で三年やりました後は、予算を出すもととして、がん特別研究というようなそちらの枠をとったということで、同じプロジェクトに対して非常に予算が回り道して出て、かつ、受け皿のところの例えば理化学研究所がプロジェクトに関してかなりの発言権を持つようになった。言いかえますれば、そこで和田の主導から問題が外れたわけであります。

  • 研究者社会の風土 物理研究者社会と生物研究者社会

小柴プロジェクト 中プロジェクト
物理学には大プロジェクトが多く、それぐらいのものが出てもそんなに強い反対はない。
大きな課題に正面から挑戦するという体質

和田プロジェクト 生物科学社会の中では突出したプロジェクト
強い抵抗。
日本の生物学者には、大きな課題に正面からチャレンジする習慣というのが、当時は少なくともありませんでした。

  • 協力企業の相違

小柴プロジェクト 浜松ホトニクスというワンマン社長
和田プロジェクト 中間管理職に、おまえ、何でもうからないことをやっているんだ

  • 純粋科学の産業化への抵抗

小柴プロジェクト 産業化とは全く無関係、物理の大きな課題への挑戦だということで認められました
和田プロジェクト 産業機器として発展する可能性
産業への奉仕が歓迎されなかった当時では非常な逆風産業に大学の研究者が協力するというのは何かこう魂を売るような、そういうような感じもある部分にはございました。

ゲノム解読というのが生命科学の大きな課題であるという認識が少なくとも我が国には全く欠如

  • 米国への配慮

小柴プロジェクト 完全に学術的競争と認識、フェアに競争しよう
和田プロジェクト 多くの企業、日立、富士写真フイルム等々有名企業が多く参加米国の下院議員が生命産業における日本の独走という危機を必要以上に言い立てまして、日本にやられてしまうぞという、そういうことをキャンペーンを広げまして、一方、日本国内の反対研究者はそれをとらえて、アメリカを余り刺激するとろくなことはないぞということで和田プロジェクトを抑えにかかった。