希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く(山田昌弘、筑摩書房)

希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く 刊行されて1年経った本ですが、いやいや、やはり大変な本です。

 家庭、教育、職業のリスク化。

 教育から労働市場へのパイプラインの漏れ。

 なんとなくは思っていたけど、日本だけでなく欧米でもそのことを指摘が90年代のいわゆるニューエコノミーを契機にあったとは。

 日本の場合は、さらに、欧米よりも深刻な人口の年齢構成のいびつさがあると思うのだけれども、この点について、この本は分析が統計的に足りない気がしたのが。

 この本で、うなってしまったは、今の世の中の、自己責任、優勝劣敗、弱肉強食について、政治の右派と左派、保守と革新という対立軸がほとんど無関係になっている、という指摘である。

 これまで人間は、長い歴史の中で社会を営んできているにもかかわらず、いわゆる先進国は、今改めて、ニューエコノミー、世界大競争の時代の中で、自由化とセイフティネットの組み合わせについて、とまどっている。

 自己責任と宣言されても、人間には、それを謳歌できる者と立ちすくんでしまう者があるということ、か。極端なことをいえば、善良なる統治者の下なら封建主義の方がよかったということにまでなってしまう。