ダブルケア人口の推計基データ

 ダブルケアに関して、25万人いる、と推計したとされる内閣府。その元ネタは、男女共同参画局の「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査報告書」によるもの。

http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/wcare_research.html

内閣府委託調査
平成 27 年度 育児と介護のダブルケアの実態に関する調査 報告書
平成28年3月
株式会社 NTT NTTデータ経営研究所

3. ダブルケア人口・世帯の推計

3.1. ダブルケア人口・世帯の推計方法

 育児と介護を同時に行うダブルケアを行う世帯・人口の推計は、総務省「就業構造基本調査」(平成 24 年)及び国民生活基礎調査(世帯票、平成 13 年、平成 19 年、平成 25 年)の個票を用いて推計を行 った。

 就業構造基本調査では、初めて育児ならびに介護に関する設問が付加された平成 24 年調査の個票デ ータを基に、ダブルケア人口を推計するとともに、その基本属性、就業状況について集計を行った。

 国民生活基礎調査(世帯票)では、ダブルケアを行う世帯数の推計を行うとともに、被介護者の状況等、就業構造基本調査では把握できないダブルケアを行う世帯を取り巻く実態について集計を行った。 更に、推計にあたっては、平成 13 年、平成 19 年、平成 25 年の経年比較を行った。

 就業構造基本調査と国民生活基礎調査(世帯票)の違いは、前者は、サンプル100万人を対象に人口(個人)を、後者は、サンプル30万世帯を対象に世帯を、それぞれ推計したもの、ということ。

資料源をたどれない記事は、ただの吊りだ。

 読売オンライン地域版だけが報じている、以下の記事。

「前向き感情で認知症減」 長寿研、4年間追跡
2016年04月16日
 幸福感や満足感など、前向きな感情を強く持つ人ほど、認知症になるリスクが減る――。国立長寿医療研究センター大府市)が15日、県内の6自治体に住む65歳以上の高齢者を対象にした研究結果を発表した。
 同センターは2003年に、「普段は気分が良いですか」「自分は幸せなほうだと思いますか」など前向きな感情を尋ねる5項目の調査(回答率52・6%)を実施。回答を得た約1万4000人のその後の4年間を追跡調査し、認知症の発症の有無と、前向きな感情との関連を調べた。

 その結果、認知症を発症した約800人と発症しなかった残りの回答者との調査時の回答を分析したところ、前向きな感情を尋ねた質問で「はい」と答えた割合が高い人ほど認知症になるリスクは減った。5項目全てに「はい」と答えた高齢者は、「はい」と答えた項目がゼロだった高齢者と比べて、認知症になるリスクが、男性で約50%、女性で約70%も減っていた。おおよそ「はい」の項目が一つ増えるごとに、リスクは21~13%減少していたという。

 長寿研が15日発表、とあるが、長寿研サイトを訪ねてもそんなリリースは見当たらない。

 発表の事実を確認できないし、記事の中身の検証もできない。

 成果還元、発信が、中途半端な研究独法

都道府県を凌駕する市区; 人口(9市区)と面積(1市)

 2015年国勢調査(人口集計速報)(総務省統計局)第1表*1によれば、鳥取県の人口は573,648。

 これを上回る人口を有する市区町村は、9市区もある。: 世田谷区、練馬区大田区江戸川区、足立区、船橋市鹿児島市川口市、八王子市

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 平成27年全国都道府県市区町村別の面積(国土地理院*2によれば、高山市の面積は、2,177.61km。

 これを下回る面積の都道府県は、2府県。:香川県大阪府

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「結論」に飛びついてよいのか? "農業者は高齢でも元気"

 こんな見出しの記事を見つけた。

農業者は高齢でも元気 支出額2割少なく 個人医療費を分析 早稲田大学の研究グループ」(2016/4/14 日本農業新聞

 元ネタは、こちら。
早稲田大学持続型食・農・バイオ研究所 - ニュース
16/3/28 実証研究「高齢でも農業者は元気で長寿 -他より少ない農業者一人当たり後期高齢者医療費」
http://www.waseda.jp/prj-sfsabi/20160328seniorfarmer.pdf

 この検証を行っていただいたのが埼玉県本庄市で、県保健医療部及び後期高齢者医療広域連合、本庄早稲田国際リサーチパークの協力を得て実施すること ができた。吉田信解本庄市長に感謝したい。

 その結果は平成 26 年度の 75 歳以上農業者 897 人の医療費が一人平均 73 万 円で、農業者以外の75 歳以上の住民 8,258 人の一人平均 91 万円と比較すると 18 万円という大きな差があることがわかった。

 ( 中略 )

 この要因分析はこれからの仕事で、ガン・心臓・脳内出血の 3 大疾患との関 係や歯科を含む医療費の内容をみることが必要になろう。また農業者の仕事の 内容や食生活などとの関連も分析が求められる。

 今回の検証の方法は、農業者(府県では農地 10 アール以上を耕作する人を農業委員会が農業委員選挙資格を持つと認定した者)のリストから26年4月1日 までに 75 歳に達した方の一覧を農業委員会及び選挙管理委員会から提供いただき、県を通じて医療広域連合に渡し、手間のかかる作業をお願いした。

 なお 25 年度以前の年は、26 年度の農業者リストのみでそのままさかのぼらせ該当者の医療費を取った。26 年度に農業を行っている農業者のみが今回の集 計対象であり、その人達の中で 25 年度ならその時点で 75 歳以上になっている人のみを集計するやり方である。そのため、26 年度より前の年の農業者には、それ以前に農業をやめたり出来なくなっている人達もいるはずだが、今回の集 計には入っていない。これは農業者のリストの関係でやむを得ないものであり、農業に従事していない住民の集計は年次ごと 75 歳以上をすべて集計しているや り方とは異なる。しかしそうした違いを含んでもなお、それ以上の大きな医療費の差になっていることを強調したい。

(文責:堀口健治)

  "農業者は高齢でも元気"という主張、そこで根拠としていて用いられた対象は、要すれば、以下の2つのグループを比較したもの。

 埼玉県の後期高齢者医療被保険者のうち、本庄市在住の75 歳以上の者を対象として、それを本庄市農業委員会の農業委員選挙人名簿に掲載されているか(選挙人)、否か(非選挙人)に分類し、それら2つのグループについて、公的医療費の比較を行った。

 この比較作業について、以下、いくつかの疑問を記す。

  1. 農業委員選挙人が、本当に農業を営んでいるのかどうか。確認が必要あり。: 掲載者だからといって、そのものの土地で現に営農が行われているのか。掲載者は名目上のものであり、実際には当人ではなく当人以外の者が営農していることになってはいないか?
  2. 選挙人と非選挙人との間で、健康寿命状態のコントロールをする必要あり。: 75歳以上の者の中には、健康寿命状態(健康で自立して暮らすことができる)の者とそうではない者とがおり、両者の間では医療費には大きな開きがある。

「便所の落書き」から「ネットの声」へ

自民党 ネット上の声分析する新組織設置 NHKニュース 4月3日 4時40分

 自民党はインターネット上に投稿された意見をくみ取る態勢を整えようと、社会的に関心の高い出来事や政府・与党の政策などに関連する、ネット上の投稿を分析するための新たな組織を設けました。

 子どもを保育園に預けられなかったという人が、「保育園落ちた日本死ね」などと、匿名で不満を書き込んだブログをきっかけに、国会では待機児童問題を巡る議論が活発になり、政府が緊急対策を発表することになりました。

 これを踏まえ、自民党はブログやツイッターなどインターネット上に投稿された意見をくみ取る態勢を整えようと、ネット上の投稿を集めて分析するための新たな組織を設けました。この組織では、関心の高い出来事や政府・与党の政策などに関するキーワードを、1か月ごとに設定し、関連する投稿を集めて内容を分析することにしています。

 自民党は集められた投稿をもとに、有権者の不満や誤解をできるだけ早く把握し、今後の政策に反映させることにしているほか、国会での議員の質問などにも生かしていくことにしています。

来るべき時が近づいている - NHK語学講座テキストに起きた異変

 恐れていた事態が、現実化しつつある…

 日本放送協会NHKについては、今日日(きょうび)、とかく評判が悪い。しかし、私はEテレ(旧 教育テレビ)、ラジオ第2は、大好きである。

 春は、テレビ・ラジオ業界では、番組改編期であるが、各種講座にとっても新規開講期である。

 とりわけ、語学講座の充実ぶりについては、素晴らしく、もっと世間に知られてもよい。

 10もの言語を、日本語放送で学べるのである。: 英、仏、独、伊、西、露、中、韓、アラビア語、葡
加えて、日本語も、英語放送で学べる*1
www2.nhk.or.jp

 そして、NHK語学講座のお供は、[NHK出版]の語学テキストである。
www.nhk-book.co.jp

 特にラジオ講座と語学テキストは、時代に、しっかり追いついている。

 NHK受信契約の「お客様番号」を登録すれば(NHKネットクラブマイ語学)、先週分の放送を、ラジオストリーミングでいつでも聴くことができる。

 そして、ラジオテキストは、電子書籍化がされている。
www.nhk-book.co.jp

 さて。語学テキストについて、本題。

 これまで、語学テキストは、私の理解では、基本的に毎月刊行、例外はアラビア語と葡は6ヶ月分丸ごと刊行、であった。

 ところが、2016年版のテキストのラインナップには、微妙な変化があった。

 テレビアラビア語とラジオポルトガル語のテキストは、12ヶ月分丸ごと刊行に変わっていた*2

 テレビロシア語のテキストは、2ヶ月分(偶数月)刊行に変わっていた*3

 日本人口の減少は、語学講座の聴取者、テキスト購入者の減少にもなる。

 将来的には、NHK出版によるテキスト刊行頻度の間引きにとどまらず、NHK語学講座の番組展開にも響いてくるであろう。

*1:NHKワールド・ラジオ日本では、日本語をいろいろな言語で学べる。例えばタイ語มาเรียนภาษาญี่ปุ่นกันเถอะ-บทเรียน 1 | NHK WORLD เรดิโอแจแปน

*2:ラジオアラビア語のテキストは、引き続き6ヶ月分丸ごと刊行。ポルトガル語には、テレビ講座は存在していない。

*3:ラジオロシア語のテキストは、引き続き毎月刊行

「130万円の壁」の高さ。資料の扱いに関する人事院の恣意性

 人事院扶養手当の在り方に関する勉強会。回は、3回目となり、議論が煮詰まってきているようだ。

扶養手当の見直しに関する論点

論点1
 扶養手当の今後の在り方や、現時点で見直しを検討することの意義・必要性についてどのように考えるか。

論点2
 見直しを行う場合、民間企業における実態との関係(民間準拠)をどのように考えるか。

論点3
 配偶者に係る扶養手当について、見直しを具体的に検討することとした場合、どのような対応策が考えられるか。

論点4
 見直しを行う場合、その実施に当たって留意すべき事項、必要となる措置は何か。

 果たして、「130万円の壁」や「103万円の壁」を崩すようなことになっては、いない。結局のところ、官民での間合いを気にしていて、思い切った議論にはなっていない。

論点1
 扶養手当の今後の在り方や、現時点で見直しを検討することの意義・必要性についてどのように考えるか。

  • 女性の社会進出が増加した現代においては、生活保障としての配偶者手当の必要性が従来に比べて相対的に低下しているのではないか。一方で、少子化等への対応の観点から、配偶者以外に係る手当については、必要性が高まっているのではないか。
  • 日本における性別役割分業の実態を踏まえれば、配偶者手当の存在が、結果的に女性の活躍推進を阻害している面は否めないことから、同手当の見直しをすることには一定の意義があるのではないか。
  • 女性の就業調整は、配偶者手当だけではなく、税制や社会保障制度に係る基準も複合的に影響して行われていると考えられ、また、税制等について、どのような時期にどのような見直しが行われるかが不透明な状況にある中においては、女性活躍推進の観点から手当のみ先行して大幅な見直しを行うこ土は、必ずしも滴当ではないのではないか。
  • 配偶者に係る扶養手当について、見直しの検討を行うとしても、現在多くの職員が受給しているという実態を踏まえれば、直ちに廃止といった抜本的な制度の見直しを行うことは難しいのではないか。
  • 民間企業を見ると、配偶者に係る手当だけではなく家族手当制度全体として見直しが行われており、例えば、子育てに係る費用の負担が大きいこと等を踏まえ、子に係る手当を増加させ、配偶者に係る手当を抑えるといった取組が進められている例もみられる。

論点2
 見直しを行う場合、民間企業における実態との関係(民間準拠)をどのように考えるか。

  • 民間準拠というときに、制度の問題と水準の問題があるが、制度の細部においては、必ずしも民間の状況と厳密に対応していない部分もあり、社会情勢の変化等を踏まえ、公務が先行して必要な見直しを行う余地はあるのではないか。
  • 一方で、国家公務員の給与に関しては、民間準拠という原則を踏まえて成り立っているものであり、また、地方公務員や地方の中小企業等に与える影響も考慮すれば、先行するとしても慎重に対応策を考えるべきではないか。

論点3
 配偶者に係る扶養手当について、見直しを具体的に検討することとした場合、どのような対応策が考えられるか。

  1. 配偶者に係る手当の廃止
  2. 支給要件の変更

ア収入要件の変更(現行の130万円から高くする文は低くする)
イ収入要件の廃止(収入にかかわらず支給するようにする)
ウ収入要件以外の要件の設定
エ支給対象職員の限定

  1. 手当額の変更

論点4
 見直しを行う場合、その実施に当たって留意すべき事項、必要となる措置は何か。

  • 民間企業において家族手当の見直しを行う場合には、人件費総額を減らすための手段ではないということを前提に必要な見直しが行われており、仮に、扶養手当を見直すとしても、見直しにより給与原資を減少させないということに留意しつつ検討する必要があるのではないか。
  • 給与原資は維持するとしても、仮に何らかの見直しを行うとすれば、個々の職員で見れば、不利益な変更となる職員も生じるものと考えられることから、激変緩和のための経過措置は必要となるのではないか

 扶養手当や配偶者控除を切った上で、雇用主が支給する児童への手当という代替措置が、今の世に叶う制度設計のはずだが、話がそこにまで進まない。思い切ってモデルを示すためには、政治的決断の必要性が期待される。

 しかし、選挙を前に、そんな冒険を与党が打って出るか。



 ところで、人事院は、この勉強会の資料をPDFでこそウェブにアップしているが、PDFファイルには保護設定を施している。"ポンチ絵"を、一方では文字情報にしていたり(文字列指定してコピー可)、もう一方では画像情報にしていたり(コピー不可)、選択的な扱いをしている。

 オープンガバメント、テキストデータの再利用可能性について、恣意的な裁量が働いている。

 人事院は、どのような意図で、このようなことをしているだろうか...