天皇を政治的に利用する内閣

 内閣は、天皇のことをどれだけ大事に思っているのだろうか。
 
 「恩赦「不合理」と反対した法務省 実施揺るがない官邸は」(朝日 10月19日)を読むにつけ、"法による支配"のことを含めて、考える。

 法務省は三つの論点を提示した。①退位の礼、即位の礼政令恩赦を実施する合理性はあるか②実施する場合、どちらか1回か2回とも実施するか③実施する場合、方法や範囲をどうするか――だ。
 「合理性がなく、恩赦は実施すべきではない」
 恩赦の原案作成から実務作業まで担う同省はまず、政令恩赦の実施に真っ向から異を唱えた。一律に罪を免じることになり、厳罰化のため有期刑の上限引き上げや公訴時効の撤廃など被害者保護の施策を進めてきた同省の立場からは「不合理なもの」という考えがあった。「社会への影響が大きく、三権分立を揺るがしかねない」と訴えた。
 現憲法下では恩赦は天皇の国事行為だが、実施は内閣が決める仕組みだ。そのため「皇室の慶弔と恩赦実施の関連性はない」と指摘。過去の恩赦で大量の選挙違反者が救済され、大きな批判を浴びたことを念頭に、「国民の批判が強い」ことも付け加えた。
 その上で「仮に実施するなら」と論点②に入った。恩赦は行政権による司法権への介入になるため、「例外機能の恩赦を短期間に2回行うのは合理性がない」。実施するなら即位の礼のみだと主張した。
 論点③でも、同省は政令恩赦ではなく、対象者を個別に審査する「特別基準恩赦のみの実施」を訴えた。同省の中央更生保護審査会が個々の反省状況などをみて当否を判断すれば、刑事司法に与える影響も少なく、世論の理解も得やすいと考えたからだ。
 最後に「政令恩赦の実施が避けられない場合」として、「効果の低い復権のみで恩赦内容を検討する」ことも伝えた。
 聞き終えた杉田副長官の答えはシンプルだった。
 「退位の礼でなく、即位の礼で恩赦を実施する」
 実施しない選択肢への言及はなく、「国民が納得できるような恩赦の内容を考えてほしい」と求め、検討会は約15分で終わった。

日本国憲法

天皇の国事行為〕
第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
六 大赦、特赦、減刑刑の執行の免除及び復権を認証すること。

 天皇の国事行為は、他にも。

二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。

 二における肉声を放送で耳にするにつけ(上皇の肉声にしても)、感じるものがあった。三、四、どんな思いで。

政府、甚大被害後もパレード調整 「淡々と進める」一方 菅氏「今週から延期検討」(東京10月18日 朝刊)にしても。

 菅義偉官房長官は週明け十五日の記者会見で、パレードの準備を「淡々と進めていきたい」と語った。政府高官も「陛下のお気持ちもあるが、国民の期待がある。台風被害は残念なことだが」と予定通り実施する考えを示していた。

 菅氏は翌十六日の会見でも、開催の是非を問われて「昨日、私が申し上げた通り」と答えた。政府高官は「淡々と準備するだけだ。パレードの延期なら前日でも判断できる」と強調。実施したい意向をにじませていた。

 結局、安倍晋三首相が台風19号の被災地を初めて訪問した十七日、政府はパレードの延期を決断した。菅氏は会見で「首相から諸般の事情を総合的に勘案し、延期の方向で検討するよう指示があった。宮内庁と相談し、あくまで内閣として判断した」と説明した。

 淡々と進めると言っていたのに。(以前なら、「粛々と」と言っていたかもしれない。)

 「内閣として判断」の頭に、「あくまで」が乗ってしまっていることに、何か意味合いを感じる。