NHK 板野裕爾 専務理事

日本放送協会第1327回経営委員会議事録(2019年4月9日開催分)

(佐藤委員) 今の説明で、坂本さんが担当していた分野をどなたが対応していくのかという疑問は解けましたが、もう一点、やや危惧しているところがあります。
 今回も予算が全会一致で通って非常によかったという報告がありましたが、板野さんが理事になられた場合、いろいろ反発があるのではないかと。たまたま今日もそういう記事が出ています。それだけではなくて私自身も何年かやってくる中で、ちょっとこれはどうかと思うようなことがいくつかありました。上田会長のリーダーシップがあれば大丈夫だと思いたいのですが、私としては板野さんに対して抵抗感があって、そこはぬぐえません。上田会長への質問というわけではありませんが、そのことは申し上げておきたいと思います。

(上田会長) そういうご懸念をお持ちの方もいらっしゃることは、私も分かっていますけれども、それを踏まえた上で、やはりNHKエンタープライズとNHKプラネットの合併を、本部のほうからやってもらうということをお願いしたいと思っています。また、そういうご懸念に対しては、私のほうでもしっかり踏まえてやってまいります。

(井伊委員) 上田会長が熟慮して選ばれたメンバーなので、特に反対することはありません。板野さんに関しては、今回のような記事が出て、何か昔の記憶などからとても嫌な思いをしたことは確かです。ただ、やはり一理あるのだと思います。ぜひ慎み深い行動をお願いしたいです。日々の言動に気をつけていただかないと、またいろんな問題が起きてくると思います。

(上田会長) しっかり指導していこうと思います

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(小林委員) このお一人お一人については、上田会長がそれぞれどのように補完し合って、グループとして全体のリーダーシップをとれるのかということを考えて選ばれているのだと思いますけれども、今回のこの人事について、気になった点が3つあります。
 1つは、今回、再任、それから新任の方が、児野さん以外は皆さん報道局出身の方です。全体として、報道局出身でないと理事になれないのかというような印象を持ってしまいます。ほかの方のバックグラウンドは分からないのですが、その辺の全体のバランスをどのようにお考えになって選ばれたのかということ。2つ目に、インターネット等の普及で視聴者の志向が急速に変化する時代において、これはNHKだけではなくて企業においても、リーダーシップのある若い方たちをどんどん登用していくということが求められる中で、今回、板野さんのように比較的年齢の高い方がまた戻られるということについて、どのようにお考えになられたのかということ。3点目は今回も残念ながら女性の理事は鈴木さんお一人だけのままだということなのですが、年齢構成も含めたダイバーシティー全体をどのようにお考えになられて今回の理事の任命をお決めになったのか、お伺いしたいと思います。

(上田会長) NHKの組織の中では、放送に関しましては大きく2本の柱があります。一つが報道、もう一つが番組制作です。私は、ダイバーシティーといいますか、いろんな多様性を持った組織がやはり強いという信念を持っていまして、そういう面では、役員の担務を見てもらえば分かるのですが、12人の役員のうち、私と堂元を除く10人の内訳は、木田、中田、鈴木の3人が番組制作で、報道の出身が板野、荒木、黄木、松坂、正籬の5人です。あとは技術が1人、営業が1人となっています。その辺のバランスは常に考えながらやっているつもりです。
 それから、若手の起用については私も常に考えていることです。ただ、公共放送から公共メディアという大きな転換で、放送法の改正もあります。外から来て3年では、放送業界のことが分かり始めたときにはもう交代となり、なかなか大きな変革ができないところ、私はたまたま3年半ほど、会長になる前に経営委員をしていましたので、会長になったときから、何をやるかということをすぐに宣言しました。そしてそれにまい進して、先ほど言いましたように、ホップ・ステップ・ジャンプで経営計画を立てて実行に移し、今度はそれを定着させるということをやってきました。こういうことは、メンバーを頻繁に替えていたら、なかなかうまく定着しませんし、問題にじっくり取り組めません。今やっているようなことは、NHKが大きな曲がり角に来ているときには、若干若い人たちのやる気をそぐ部分があるかもしれませんが、その分、お気づきかもしれませんが、理事待遇をぐっと増やしました。要するに、理事待遇の人は、現場で理事待遇という形で力を発揮できる。一方、理事になった人は、どちらかというと現場から少し離れて経営を議論する。しかも、先ほど言いましたように、グループ経営をやるためには、少し高齢になっても、そこからやはり出先のトップを押さえられるようにしないと、ずっと何代か前の自分のボスだったような人にうまく対応できませんので、そういったことも配慮しながらやってきたということです。それから、女性の活用も、今度また局長の人事できちんとやっていこうと思います。昨年は鈴木を理事にしたわけですが、非常に限られた人数の中で、結局あまり変えられませんでした。そういう中でもう一つ、語弊があってはいけませんけれども、常に役員候補になるような女性をフォローしています。やはり役員になってもらうためには、いろんな経験をしてもらう必要があって、急に一本釣りみたいにすると、経営の課題を議論するときについていけないことがあります。そういう意味では、鈴木も結構苦労したのではないかと思います。もう随分慣れてきたみたいですので、今度また新しい業務を担当させながら、経営の課題を一緒に議論することによって、その次を見据えながら育てていく。やはり、地域の放送局長や本部の局長にするなど、そういう経験をさせてあげないと、急に一本釣りしても、タイトルだけがついてくるだけで、実を伴わないところがあると思います。ダイバーシティーということについては、私は100%賛成で、先ほど言いましたように、役員の多様性もそうですし、男女の多様性もそうですし、これはしっかりと取り組んでいきたいと思います。今回は残念ながら2人目はなかったというだけです。

 (小林委員) 年齢に関係なく活躍はしていただかなければいけないのですけれども、年齢が上の方が主導権を握るということではなくて、やはり下の若い方を育てていくことを主要な役割としていただけるように、会長からもしっかり指導をお願いしたい。

(上田会長) おっしゃるとおりです。児野は恐らく聞き飽きていると思いますけれど、「君の最大の任務の一つは後任を育てること」と言っています。やはり経営の継続性を持って、誰が来られて誰がやられても、ある底辺部分でNHKが向かわなくてはいけない方向のところは共有できるような形をきちんととる、ないしは、上が代わっても下がしっかりしていて、その流れは変わらないなど、その辺は日ごろから考えているところで、しっかりやっていきたいと思います。ご指摘は全く同感です。

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(石原委員長) ほかにご意見、ご質問がなければ採決となりますが、その前に担務の説明もしてもらえますか。

(上田会長) それでは、今お願いした同意に関連することについて、先に説明させていただきます。
 専務理事についてです。定款第35条第2項に、「理事のうち、会長の任命する若干人を専務理事とする」との規定があります。この規定に基づき、私の提案をお認めいただけましたら、本年4月25日付で、再任の児野昭彦、そして板野裕爾と荒木裕志を専務理事に指名したいと思います。

 次に、ご同意いただけた場合の、役員の担務についてです。

 堂元副会長には、会長補佐として、個別の担当はこれまでと同様に秘書業務統括を担当してもらいます。重大なリスク管理事案等への対応など、他の特命は私から随時指示します。

 木田専務理事には、引き続き放送総局長として放送全般を統括してもらいます。テレビ放送の常時同時配信も見据えて、デジタル業務全般を担当するほか、さらに、ことし1月に発足したPD一体化運用事務局も統括してもらいます。最高水準の放送・サービスの提供を目指し、東京オリンピックパラリンピック実施本部長も継続してもらいます。

 板野専務理事には、先ほど申し上げましたとおり、グループ経営改革統括として、関連事業局を担当してもらいます。

(石原委員長) 上田会長から提案がありました理事の任命の同意について、ご異議はありますか。

(佐藤委員) 棄権してもよろしいでしょうか。

(石原委員長) はい、わかりました。

(小林委員) 私も、年齢や全体のバランスに疑問が残りますので棄権にしてください。

 採決の結果、理事の任命について原案どおり同意することを議決。