土地に関する行政の不作為

 大阪城は未登記、という話。産経Westから。

【関西の議論】 「城」の所有者は?「登記」から見える城の“歴史”…大阪城天守閣「未登記」、土地「旧陸軍省」の“謎”

2014.4.4 07:00

「太閤さん」こと豊臣秀吉が築いた大阪城大阪市中央区)の所有権の帰属が不動産登記上、宙に浮いている。登記簿を確認すると、昭和6年に再建された天守閣は建物自体が登記されておらず、「無主」のまま。土地の所有者は第2次大戦後に解体された旧陸軍省だった。天守閣を管理する大阪市は「他者の占有は考えられない」として今後も登記しない姿勢…

第2次大戦の空襲を耐え抜き現存する3代目天守閣。歴史資料を展示するなどし、今や大阪の観光名所としてにぎわうが、築城から80年以上、建物が登記された形跡はない。

 なぜ登記をしないのか、大阪市に理由を聞いた。

 担当者は「登記はあくまでも権利関係の問題が発生した際に他者に対抗するための手段。天守閣の所有権を第三者に移したり、他者に占有される可能性が考えられないため」と返答。天守閣の所有権を第三者が主張した場合の備えについては「たとえ裁判になったとしても、天守閣が市の財産であることはさまざまな客観的事実から十分証明ができる」と淡々と話す。

 法務省によると、不動産登記法は、新築した建物の所有権を取得した者は取得の日から1カ月以内に登記をしなければならないと定めている。だが、国や地方自治体が所有する建物や土地については、同法の附則で登記義務が除外されているという。

 市の担当者は「すべての市有の建物の登記手続きを進めれば、膨大な作業を要する。現状のままで特に問題がないため、天守閣について今後も登記する予定はない」としている。

 不動産登記法の附則における登記義務除外については、こちら:
国や地方公共団体の所有する不動産には登記の申請義務がない?なぜ: 調査士試験の豆知識

 根拠法令は,不動産登記法附則9条です。

 旧法の読み替え規定になっていて,旧法が手元にない方はわかりづらいと思いますので次に読み替えておきます。

附則9条(読み替え後)
不動産登記法(平成16年法律123号)第36条,第37条1項及び2項,第42条,第47条第1項,第51条第1項(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物に係る部分を除く。)及び第2項,第57条の規定は,地方税法第348条の規定により固定資産税を課することができない土地及び建物並びに同法343条5項に規定する土地については,指定期日後も当分の間は適用しない。」

 このことについての法務省の見解(内閣府 国政モニター
http://monitor.gov-online.go.jp/html/monitor/answer/index09-ck.html

https://monitor.gov-online.go.jp/html/monitor/answer/h21/ans2110-002.pdf
地方自治体の建物と表題登記 (回答:法務省) (平成21年10月)

地方自治体の建物と表題登記

 地方自治体が建設した施設について、登記簿閲覧の手続をしようとして驚いた。所有権保存登記はもとより、表題登記も申請されていないというのである。しかも、法務局係官の話によると、地方自治体の建物の登記未申請は珍しいことではないというのである。

 地方自治体の施設については納税の必要がなく、所有関係も明らかなので、登記の必要性がないためだそうである。しかし、所有権保存登記はともかく、表題登記は申請することは建物を建てた者の義務ではないだろうか。不動産登記法第47条第1項には次のように定められている。「新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない」更に第164条では「…第47条第1項…の規定による申請をすべき義務がある者がその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する」と罰則まで定められている。ということは、地方自治体が建設した、当地方では少なくないといわれている、登記の表題部さえ作られていない建物は、違法状態にあるのではないだろうか。地方自治体などに特別な例外規定があって法律上は問題ないのであれば、根拠をお知らせいただきたい。

 未登記は違法というだけでなく、情報公開の原則から考えて、地方自治体が建設した施設の基本的な事項は、まずは登記という法に則った形で公開されるべきであろう。地方自治体の建設した建物の表題登記が未申請となっている事例が当地方に限られた問題なのか、全国的な習慣なのか不明であるが、実態を調査して、少なくとも違法状態があれば解消するよう対処していただきたい。
(北海道 無職 男 64歳)

回答:法務省

 不動産登記法(平成16年法律第123号)は、不動産の表示の登記については、所有者等に登記申請を義務付けています(同法第47条等)が、国又は地方公共団体が所有する土地又は建物についての表示に関する登記の申請義務については、当分の間これを免除するとの従前の取扱いを継続することとしています(同法附則第9条、不動産登記法の一部を改正する等の法律(昭和35年法律第14号)附則第5条第1項)。

 これは、不動産登記と土地台帳等との一元化に伴い、従前の土地台帳法・家屋台帳法において、国又は地方公共団体が所有する不動産について登録の申請義務を課していなかった取扱いを考慮したものです。

 この土地台帳等の取扱いの趣旨は、国有地の管理は国有財産台帳によって行われるため、土地台帳等に登録することは、二重の管理となり、制度として考える必要がなかったためとされております。

 この趣旨は現在でも同様であり、国又は地方公共団体の所有不動産の管理が国有財産台帳(国有財産法32条第1項)又はいわゆる公有財産台帳(国有資産等所在市町村交付金法第3条第3項参照)によって行われていることから、また、不動産の権利関係を公示することによって取引の安全と円滑に資するという不動産登記制度の意義にかんがみても、一般の取引の対象とならない国又は地方公共団体が所有する不動産について、表示の登記の申請義務を直ちに課すまでの必要はないものと考えられます。

 以上のとおり、地方公共団体が所有する建物については、表示に関する登記の申請義務が課されていないため、表示登記がないとしても違法状態にあるとはいえません。

 不動産登記とは別に、国有財産台帳公有財産台帳があるという、多元的、多重的基準があることにより、行政記録が一元化されていない。

 不動産登記は、固定資産税課税の基礎となるものであろうが、課税免除をされている公共団体には関係のないこと。登記をするための予算(税金)を付ける気もなし。

 地籍調査に加えて、土地に関する行政の不作為...

 すると、こんなことも起きる。【失念】登記忘れ?それとも分筆忘れ?…「公衆用道路」上に公社住宅建てて47年、やっと分筆登記手続に入る 大阪市住宅供給公社

 富山市役所本庁舎(新桜町)の建物も未登記のところ、富山県公共嘱託登記土地家屋調査士協会は無償で登記してあげたのだという(
富山市庁舎を登記 富山県公嘱協会 - 岡山県公共嘱託登記土地家屋調査士協会 )。