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法案づくり省力化と、改め文

日経4月4日夕刊から。

法案づくり省力化、職員の残業抑制 政府、電子データ活用

 政府は国家公務員の残業を減らすため、法案づくりの新システムを導入する。国のすべての法令をまとめたデータベースを作成し、現行法と改正案の新旧対照表などの文書をパソコン上で自動作成できるようにする。紙の資料をつくる手間が省け、法案を事前審査する内閣法制局とのやり取りが電子データで可能になるほか、チェック作業も短縮できるという。2016年10月から始める。

 法案をつくる場合、担当省庁が原案を作成し、内閣法制局が構成、憲法やほかの法律との妥当性などを審査し、修正を繰り返してまとめる。

 内閣法制局の審査を受けるには、指定された正式な法規集をコピーするなどして資料を作成する必要がある。新しいシステムで法令データベースから必要な条文をダウンロードして資料をつくれるようになれば、手間が大幅に省ける。法律が改正されればデータベースも更新され、古い条文を使うミスも防止できる。

 内閣法制局の指示を受けて条文を修正する場合も新システムを使う。担当省庁と法制局で何度もやり取りをするケースが多いため、電子データを使えるようになれば担当者の負担が軽減される。

 正式には、法制執務業務⽀援システム e-LAWSというらしい。

 情報システムを導入しても、業務を改革しなければ意味がない。改め文の扱いはどうするのだろうか?

2002年11月19日朝日新聞から(「福祉の勉強室」を元にさせてもらい、引用)

法改正時の 「改め文」 を改めよう 分かりにくいと廃止論

 法律改正案の公式文書で、変更点を羅列した「改(かい)め文」と慣用で呼ばれる書式について、政府や自民党内で廃止を求める声が上がっている。明治以来の慣習だが、改正個所を「……を――に改め」と羅列するもので、意味が極めて分かりにくく、参考資料の新旧対照表だけで十分、という主張だ。しかし、内閣法制局は「正確さを犠牲にはできない」と、廃止に強く反対している。

 国会で審議される法改正案はすべて「改め文」だ。02年5月に成立した「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律」では、数十カ所にわたり「……を――に改め」と続くが、専門家でないと法律がどう変わるのか分かりにくい。細かい決まりも多く、作成に手間がかかるため、「担当者が倒れたこともある」(政府関係者)。

 一方、参考の新旧対照表は、新法と旧法が上下に分かれ、改正部分に線が引かれ、「改め文」より分かりやすいとされている。

 「改め文」について、「電子政府」などの情報技術政策を検討している自民党のe-Japan重点計画特命委員会(委員長・麻生太郎政調会長)が8月に、「法制関係業務の徹底した簡素化」を政府に要望するなかで、廃止を求め、政府内からも「新旧対照表で十分」との声が出ている。「改め文」は慣例のため、廃止に法改正などは不要だ。

 しかし、内閣法制局は「正確さと簡素さのために改め文は必要。反省と検討を積み上げて定着している」と、明治以来の伝統を守り通す考えだ。

 改めるか改めないか。11月から始まった政府の情報化統括責任者の連絡会議で、「改め文」をめぐる議論があらためて展開されそうだ。

 内閣法制局改め文になぜ拘泥するのかという理由は、衆議院総務委員会での議事録(第155回国会 総務委員会 第9号(平成14年12月3日)で、法制局長官が説明している(懐かしいやりとりが。『実に改め文の二十二倍を超える』 - ☈法令ニュース検索日誌)。

谷本委員 先ほど片山総務大臣の方からも、IT国家をつくる、電子政府、電子自治体をつくっていく、その中では、単に文書をインターネットの上に載せるというだけではなくて、同時にそれぞれの業務、そういったものを効率化、簡素化していくことが大事だというお話をいただいたと思います。

 それに関連をいたしまして、実はことしの八月に自民党のe―Japan重点計画特命委員会でも話題になったことなんですけれども、法律改正案、これの公式文書の中で、これは法律ではなくて慣例で使われているんですが、改め文という方式が今使われております。これは、何々を何々に改め、何々を何々に改めと、改正部分だけをずっと羅列する文書でありますが、私のように、まだまだ一年生議員で、すべての法律を、その条文をすべてはっきりと暗記していない者がこれを見ますと、何をどういうふうに変えているのか、何がどの改正点なのか、そういうことが全くわからない文書であるというふうに私は思います。同時に、改正法案につきましては、参考資料の新旧対照表というのもついています。これは見れば一目瞭然ではっきりとよくわかるので、私としては、こちらをよく参考にしながら見ております。

 こういった状態の中で、そういう行政の作業を簡素化するという話の中で、この改め文というものが、改正手続の中で果たしてこういうやり方でいいのかどうかということをぜひ一度考えていただきたい。こういう方式を使っているのは、実は日本だけでございます。アメリカにおきましては、議員立法が多いという状況の違いもありますけれども、アメリカでは逆に、こういう書き方は禁止をされております。この改め文を見てわかる国民は、恐らくほとんどだれもいないと思います。専門家、官僚の方々でなければわからない文書じゃないかというふうに思います。

 これにつきまして、十一月から政府の情報化統括責任者の連絡会議というのが始まったようでございますけれども、この中でしっかりとした議論をしていただきたいと思っているところでありますが、この改め文の使用に関しまして、内閣法制局の方の見解を伺いたいと思います。

横畠政府参考人 お答えいたします。

 内閣法制局におきましては、法令の正確性はもとより、これが国民にとってわかりやすいものとなるよう平素から意を用いているところでございます。また、法令案の作成事務の簡素合理化につきましても努力をしているところでございます。御指摘のいわゆる改め文と言われる逐語的改正方式は、改正点が明確であり、かつ簡素に表現できるというメリットがあることから、それなりの改善、工夫の努力を経て、我が国における法改正の方法として定着しているものと考えております。

 一方、新旧対照表は、現在、改正内容の理解を助けるための参考資料として作成しているものでございますが、逐語的改正方式をやめて、これを改正法案の本体とすることにつきましては、まず、一般的に新旧対照表は改め文よりも相当に大部となるということが避けられず、その全体について正確性を期すための事務にこれまで以上に多大の時間と労力を要すると考えられるということが一つございます。また、条項の移動など、新旧対照表ではその改正の内容が十分に表現できないということもあると考えられます。

 このようなことから、実際上困難があるものと考えております。

 ちなみに一例を申し上げますと、平成十一年でございますが、中央省庁等改革関係法施行法という法律がございました。改め文による法案本体は全体で九百四十ページという大部のものでございましたけれども、その新旧対照表は、縮小印刷をさせていただきまして、四千七百六十五ページに達しております。これを改め文と同じ一ページ当たりの文字数で換算いたしますと、二万一千三百五ページということになりまして、実に改め文の二十二倍を超える膨大な量となってしまう、こういう現実がございます。

 縮小印刷という事務用語は、2002年当時の議論では普通に使われていてしかるべきだが、現代においては当然、死語であろう。

 立法爆発の時代、ページ数が何百だろうが何千だろうが、タブレットがあれば、それでよい解決。

 ところが、である。

 国会の議場ではiPadの持込は禁止されている。

 これは、1996年の議院運営委員会における「携帯電話等の使用に関する申合せの件」に基づく。安倍首相「国会でiPad解禁も」 小松一郎長官の携帯電話持ち込み問題で言及(ハフィントン・ポスト)は、1年前のこと。

 その後の動きは聞こえてこない。

 新旧対応表のページ数のことなどどうでもよく、中央政府を尻目に、地方自治体では、改め文を排除する動きは以前から続いている。

 2010年6月1日朝日新聞から。

だらだら「改め文」廃止 南相馬市 - マイタウン福島

 南相馬市は条例や規則の一部を改正する場合の表記方法について、修正する項目を書き連ねる「改め文方式」をやめ、改正前と改正後を横書きの表形式で示す「新旧対照表方式」を採用する。すでに規定を変更しており、6月市議会への提案分から実施する。

愛媛県報「愛媛県報の電子化及び条例等改正方式の変更」(2013年2月21日)

 愛媛県報は、これまで紙に印刷して発行するとともに、県のホームページにも掲載してきましたが、利用者の利便性の向上、経費削減等を図るため、印刷を取り止めて、原則としてホームページへの掲載のみとすることとしました。

…また、条例、規則、訓令及び告示(規程方式のものに限る)の改正方式については、現在、「改め文方式」を用いていますが、皆様により分かりやすい情報提供を行うため、県報の電子化に併せて「新旧対照表方式」を導入します。