集団操作 - 江戸しぐさと、集団的自衛権

 「江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統 」(原田 実)を読んだ。

 本書は、いわゆる江戸しぐさについて、江戸しぐさそのもの、江戸しぐさを提唱した中核的人物、そして、江戸しぐさがもたらしつつある社会的影響、の三段重ねにより、幅広く渉猟した資料に基づいてアプローチを試みた労作。

 人間が持ってしまう期待と核心部分を煙に巻く巧妙さによって、周囲の人が巻き込まれ、そして集団が操作され、社会が影響されていってしまった過程とその構造が浮き彫りになってくる。

 江戸しぐさについては、表現の自由を標榜する出版界やマスコミは、悪のり。私も、江戸しぐさは、地下鉄の公共広告で認知して、その実在を信じ込まされていたクチである。

 本書が引き合いに出しているように、江戸しぐさは、以前の「水からの伝言」問題が強く思い出される。
水からの伝言 (世界初水の氷結結晶写真集)
水はなんにも知らないよ (ディスカヴァー携書)

 いわゆる健康・医療については、近著として「「ニセ医学」に騙されないために 危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!」(NATROM)がある。

「ニセ医学」に騙されないために   危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!

「ニセ医学」に騙されないために 危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!

 水伝、ニセ医学がニセ科学なら、江戸しぐさはニセ社会科学問題。

 大学・学会の学界(自然科学系の研究者、教育者)からの批判がわき起こった水伝に対して、江戸しぐさに関して、学会(人文社会科学系の研究者、教育者)は、これを、野放し、放置、あるいは、迎合さえしていることを、本書は憂慮している。

 実は、江戸しぐさよりも、もっと恐い集団操作が現在進行形で進んでいる。

 それが、特定秘密保護であり、集団的自衛権。ものが言えない社会、ものを言わないマスコミ、が着々と進んではいないか?