ローテーションの ほころび がもたらしている、災禍の数々

 公務員の人事ローテーションの ほころび が、そこここで災禍をもたらしていることを指摘する記事を目にしたので、書き留めておく。

 日本の科学行政の問題は、科学者ではなく、数年で交代する専門性に乏しい*1行政官が中心となるため、新しい発見や進歩に対応することができず、規制改革のスピードが遅いことです。そのため研究者たちは萎縮し、先進的なテーマになかなか取り組みにくい。新療法や新薬の開発競争で、国内の規制が緩和されるのを手ぐすね引いて待っている間に、外国の研究者に先を越されてしまうというパターンは、これまで何度となく繰り返されてきました。
 …現在、日本でも再生医療に関わる規制改革が進められつつあるのは確かです。もちろん生命倫理を軽視してはなりませんが、研究の中身と目的を理解していただいた上で、もっと改革のスピードを上げてほしいというのが私の願いです。


「日本に閉じこもるひ弱な東大生」(中内啓光、文藝春秋1月号)

…高齢者向け施設・住宅に関する政策は、これまで迷走に迷走を続けてきた。
…経緯を振り返ると、厚労省も国交省も早くから高齢者問題を把握し、取り組んできたのは事実だ、だが、来たるべき高齢者人口は予測できていても、介護や認知症などで必要とされる制度は完全に見通せず、その都度の状況を見ながら制度変更を重ねてきた。
…政策の一貫性のなさを指摘する声もある。サ付き事業者の関係者が言う。「高円賃は国交省の担当者が変わった途端、尻すぼみになり、いまサ付きに置き換わりつつある。事業者が振り回せるのは仕方ないとしても、利用者の高齢者さんが振り回されるのは残念に思います」


「老人ホーム乱立 後悔しない施設選び」(森健、文藝春秋1月号)

 人事ローテーションに関しては、政府内からこんな提案も。

人事ローテーション上の配慮(中核となる人材は、プロジェクトのライフサイクルの節目まで異動させない)



(参考)IT戦略を成功に導くために(内閣情報通信政策監


資料5 「『世界最先端IT国家創造宣言』の進捗管理について」内閣情報通信政策監(政府CIO)(IT総合戦略本部12月20日))

 どうして、人事ローテーションについてこんなことが言われ出しているのだろうか。人事異動は、近年になって急に行われるようになったものではなく、組織としての新陳代謝、若返りに必要なこと。その際、人事の配置、適材適所が適確に行われなければならないのは、当然である。

 けれども、人事ローテーションにほころびについて、人材の質の低下や配置の巧拙だけを論じるだけで十分なのだろうか。

 公務員の人減らしの結果、組織力が低下していることが一因ではないのか。組織体制がやせ細ったことにより、政策が、どうしても個人に依存するきらいが強まり、組織として政策を企画、設計、調整し、それを実施する能力が低下してきているのではないか。

 これを裏付ける別の事象も思い浮かぶが、それは別につづることにする。

*1:ただ「専門性に乏しい」と斬って捨てる、というのは、言い過ぎであると思う。中には、仮にそんな人材がいたとしてもそんなことはあってはならないが、たいていの場合は、引き継ぎをしてから業務習熟するまでには時間がかかってしまう。