「匿名化」って、いったいなんですか?

経済活性化のための緊急提言
平成2 4 年1 1 月2 6 日 規制・制度改革委員会 経済活性化ワーキンググループ

2.「モノ」の動きの活発化

(5)個人を特定できない状態にした情報の利用の自由化

 個人情報の保護に関する法律個人情報保護法) により 「個人情報」(※)を取り扱う際には「利用目的による制限」 、「第三者提供の制限」等の種々の制約が存在するところ、収集した「個人情報」に対してどの程度の加工等を実施すれば「個人情報」 に該当しなくなるのかは必ずしも明らかではない。

 また、いわゆる連結可能匿名化情報(個人を識別できるよう個人と符号・番号の対応表を残す方法による匿名化)を本人の同意なく第三者に提供することが、どのような場合に個人情報保護法上の「利用目的による制限」や「第三者提供の制限」等の規定に抵触することとなるのかも必ずしも明らかではなく、 収集した「個人情報」(例えば、商品購入履歴や乗降履歴等のいわゆるビッグデータ) を活用した民間ビジネスの創出を阻害している旨の指摘がある。

 ビッグデータの活用を促進する観点から、「個人情報」を入手した者が「個人情報」に対してどの程度の加工等を行えば「個人情報」に該当しなくなるのか、連結可能匿名化情報の個人情報保護法上の取扱いについて事業等分野ごとのガイドライン等において明記する必要がある。

(※) 「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他 の情報と容易に照合することができ、 それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。 ) をいう(個人情報保護法第2条第1項) 。

 連結可能匿名化という言葉を、初めて見た。

 そんな言葉、英語に訳せないだろう、と思ったら、あった。 Linkable Anonymizing 。でも、Google Englishしたところで、日本人が書いた文献でしかヒットしないようである。

 厚生労働省は、必要があって、連結可能匿名化連結不可能匿名化、という言葉を作ったのだろう。そのように「匿名化」された情報の取扱いに従事する者は、高度な倫理性が要求される臨床研究者の世界の中で成立しうる、お約束である。

 けれども、お上品な約束なんて洒落臭い(しゃらくさい)と、規則は破るためにある、と思っている人だって、この世に存在する。

 ビッグデータをゴールドラッシュと思っている人たちに対して、

 米国のオンライン映画配信・DVDレンタル会社Netflixは、顧客の嗜好に合った映画をお勧めするアルゴリズムのコンテストのために、"匿名化"したユーザーの視聴履歴データをコンテスト参加者に提供した。その視聴履歴データは、テキサス大学のグループの分析により、一部の個人を特定されてしまった。2006年のことである。

 この結果を受け、米連邦取引委員会(FTC)がNetflixに「プライバシーに関する懸念」を指摘した。Netflixは、第2回のコンテストを中止した。ビッグデータが拡大する“個人識別情報”の範囲 | 日経 xTECH(クロステック)