TBSラジオ改編に見る、ラジオ文化の危機
近所の空き地が、ドキドキする遊び場であり、秘密基地だった。
そしてラジオは、「声の遊び場」、自分が知らない誰か、でも知っているその誰かさんの、現在進行形の醍醐味と息づかいで感じる。
この秋、TBSラジオの「声の遊び場」が2つなくなってしまう。
全国こども電話相談室が44年の長い歴史に幕を閉じた。無垢なこどもの質問が、どうして、おとなにはむずかしくなってしまうのか。おおらかな「全国こども句会」、無邪気な「小学生の気持ち」、朝日小学生新聞、朝小レポーターからの意外な報告。こんな文化が失われてしまった。そして、番組からは、この番組の代名詞的人物 無着成恭(むちゃく せいきょう)生み出している。
こども電話の競合相手は、平日の放課後(かつての放送時間)の塾であり、日曜朝のこども向けテレビ番組。そして、阻害要因は、こどもがラジオに触れる機会に恵まれる、という状況が失われつつあること。
wikipediaでこども電話を見ると*1、かつては、かつての放送時間の平日夕方では、受け付ける電話番号を末尾制限していたという(例えば、「今日は、末尾が偶数の人のお電話を受け付けます。」)。
こども電話の最後には、「おやこ電話相談」と称して、親からの電話も受け付けていた。これは、相談電話の数の少なさを補(おぎな)うための、方法だったのでないだろうか。
ラジオが世の中をおもしろくしてくれる、ということをこどもの内に経験しないと、おとなになってから、ラジオを聞/聴こうなんて思うわけない。
「夜な夜なニュースいじり」バツラジが5年の歴史に幕を閉じた。おとなラジオの競合相手は、インターネットと、深夜のテレビアニメ放送?
かつての夜の若者向け番組の一時代を築いた宮川賢が進行する、テレビじゃやれない 猥雑さ と グダグダ感。こんなアダルト向け番組フォーマットを開発したせのちん(妹尾匡夫)氏は、番組終了後に、番組に込めたその手法を陳列している。バツラジ終了。ありがとうございました。:妹尾匡夫と書いてセノオマサオなのだ。BYせのちん。:So-netブログ。これらフォーマットについてせのちん氏の自負は深く、僭越ながら、私も賛成する。
せのちん氏によれば、バツラジ打ち切りの要因の一つは、経費節減だという。(それだけではないというが。)
メディア別広告費がインターネットに抜かれ、TBSラジオからさえも、ラジオ広告、スポンサーが櫛(くし)の歯が抜けるようにいなくなってしまっているのがわかる。吉田照美は、文化放送のステーションパワーの低下を嘆いたが*2、ラジオ自体のパワーの低下。
スポンサーの付いていなかった番組だった文化系トークラジオLifeがギャラクシー賞を取った*3のは、なぜか。
それは、プロデューサー黒幕氏のラジオ番組企画意図に対する評価をもちろん忘れてはいけないが、賞選考に出品した放送(その回の番組テーマは「運動」)にゲスト出演した松本哉や外山恒一が世間で巻き起こしているムーブメントを、賞審査員がそのラジオ番組が巻き起こしているムーブメントであると誤解したことも要素のではないか。
ラジオは、もっと街に出て行って、守りではなく、いろんなメディアに攻めに行って、ムーブメントを巻き起こしてくれ*4。
それを実践しているのは、やはり、Life 告知いろいろ (文化系トークラジオ Life)。
実は、ロートルだけど、大沢悠里のゆうゆうワイド*5は、それを実践している。毒蝮三太夫のミュージックプレゼントだって、TBSラジオFM90.5+AM954~聞けば、見えてくる~だって(秋山ちえ子はシンディローパーも巻き込んでいる。)。
ところで、今ラジオを聞こうといっても、ラジオの受信機があるだけでは不十分とは言えなくなっている。マンション暮らしの家庭にとっては外付けアンテナが必要。その手ほどきを、ラジオ局ウェブサイトでは、怠りなく示すべき。
雑誌hon-ninにTBSラジオの番組ストリームが出稿している広告で、AMラジオ受信方法を指南しているが、それはもっといろんな局面で行うべき。
そのストリームも、街に出ている。平日昼間に聞けないリスナーのために出しているPodcastはおもしろいし*6、本も出したし、今度はトークライブ。
〜TBSラジオ・ストリーム緊急トークライブ〜 コラムの花道最凶コラボ勝谷と小西と武田記者の斬り捨て御免!10月12日(日)ラフォーレミュージアム原宿
*2:http://d.hatena.ne.jp/hottokei/20070329#20070329f1
*3:信じられないことが起きましたよ! (文化系トークラジオ Life)
*4:ラジオがメディアに攻めにいった例の異端は、文化放送セイ!ヤングの流れを汲むさだまさしによるNHK総合テレビへの進出であろう今夜も生でさだまさし。この行動を非難する意図はないが、問題は、この行動がラジオから切り離されてしまった形で行われているものであり、ラジオへの還流がないこと。
*5:関東でのラジオの聴取率は全局、全番組 No.1 TBS RADIO 大沢悠里のゆうゆうワイド: ありがとう! 全局全番組 聴取率第一位!