ニセ科学フォーラム2007

 一言でくくることはとてもできない、縦横無尽なニセ科学論。

ニセ科学フォーラム2007 7日(土)13:00〜17:30 学習院中・高等科

 科学的吟味はもちろん、イデオロギー、道徳、世相、ニューエイジ、スピリチュアル、マーケティング、心理学、民事訴訟、教育、教育行政、日米の比較教育、など、など。

 5人の講演者は学術界からの人; 小波秀雄、菊池誠天羽優子、土佐幸子、左巻健男。フォーラム次第には名前が明記されてはいなかったけれども、フォーラム MC役 の田崎晴明モデレーションは秀逸。

 聴衆は、年齢層としては多様、女性は5%くらい。質疑にマイクを持ったのは、大学、院生、理科実験デモンストレーター、ライター(男・女)、会社員(家電メーカー、ソフトウェア)

 asahi.comの報道では、

 マイナスイオンゲルマニウム血液型性格判断などに根拠があるのか――。科学的なようで科学的ではないニセ科学疑似科学)の実態や、それらがはびこる背景を語る「ニセ科学フォーラム」が7日、東京の学習院中・高等科であった。

(中略))

 会場には昨年の倍の約230人が集まり、ほぼ満席の盛況。主催者の一人、同志社女子大左巻健男教授は「『発掘!あるある大事典2』の捏造(ねつぞう)や『ナントカ還元水』が話題になり、関心が高まったのでは」と話した。

とあるが*1、会場の雰囲気は、考えさせられるだけでなく、結構、笑えた、沸いた。

 現代社会において科学知識なしに暮らすことは、それを買おうという人(健康、痩身のために商品・サービスに手を出すこと)が危険な思いをする例は枚挙にいとまがないが、そのことは売る人にとっても例外ではない。

 水商売ウォッチング天羽優子さん紹介のエピソード

 磁場に水道水を通過させることによって,水の物性を変化させて活性化した磁気水を造る装置 … を給水管に取り付けた結果,その磁力の作用によって水質に変化が生じ,それがヒラメの生態に強く影響して,本件生け簀で養殖されていた全てのヒラメを死に至らしめたという因果関係を事実上推認することができ,これを覆すに足りる証拠はない。

本件事故による損害の合計は670万円となる。

徳島地方裁判所 平成12年(ワ)第73号 損害賠償請求

 本当に磁気活水器が海水に住むヒラメを殺したのか?そのことの因果は、科学的に解明されたわけではないが、法廷ではそう整理されてしまった。

訴訟での因果関係の認定

原告被告の主張が一致すれば裁判所はそれを事実と認定する

科学的に正しい必要はなく、科学的に確定させる必要もない

(天羽 スライド から引用)


 水商売の事例。60万円もの大枚を浄水器にはたき、”元を取ろう”と毎日水を10リットル飲み続けて体調を持ち崩した、という例。

 水商売の比較研究。アメリカでは Penta Waterは、"clean, crisp, refreshing"という形容詞で売られるが、日本に来たペンタウォーターは「美容と健康」という口上に変わってしまう。ケンコー・コムの売り文句に至っては、「不純物や化学物質を取り除いたアメリカ原産のピュア・ウォーター」である。本当に純水、ただの H2O であるならば、原産国は関係ないはずなのにね。

 効能をうたった商品であっても、実際にはそれが偽装で中身がなければ、無害で済むのでまだ笑っていられる。

 もしそれがホンモノだとしたら、むしろ人体に害がある場合が出てしまうという例として取り上げられたのは有機ゲルマニウム水有機ゲルマニウムとは、薬のセロシオンであり、肝臓を悪くしている人には、危険性が出てくる

 菊池誠の演題は、「スピリチュアル・ニューエイジニセ科学」。体調が悪いようにおっしゃっていたけれども、あの能弁、話の緩急は、すごい。体調万全の時にはどんなモードになってしまうのだろう。

 タオ物理学とかいうことが、'60年代のニューエイジとかになるのか。

 文化系トークラジオLifeのテーマを「理系」、にして、この先生をゲストに招いたらどうだろう。

 ニセ科学と表裏一体の学校教育にも深い世界があることを左巻健男の講演から知る。教育論になると、みな、熱くなる。

 理科教育の内容が「精選」に「精選」を重ね、あげく「厳選」されて中身がスカスカ(このことは理科に限らないのだろうが)。探求する力をつけようにも、その土台となる知識が、ない。具体的には、たとえば、進化論を理解するための、生物の多様な形態についての学習がないのだという。





(この項、思い出すものがあれば、また書き足すかもしれません。)

*1:科学と非科学と銘打った連載を組んでいた毎日新聞は、これにはかんでいないのだろうか?