「マクロミルでは選挙がらみの調査は、原則断る。」
朝日新聞26日朝刊 経済面けいざい一話「繁盛 ネット世論調査」。
調査する側でなく情報の受け手も、データの偏りを意識して向き合うことが必要だろう。
と、署名付き記事の志村亮記者は自戒する。
記事の見出しを抜き出してみる*1。
「安い速い」草分け会社一部上場
業界急成長 大手も参入
「信頼性に疑問」の指摘も
視点 「偏り」の意識必要
この記事で興味深い記述は、ここ。
マクロミルでは選挙がらみの調査は原則、断る。まだ会員が首都圏に集中し、高齢者の会員が少ないため、偏りが生じると考えているからだ。
「選挙がらみの調査は原則、断る。」 マクロミルは潔い。一方、Yahoo!リサーチは、id:hottokei:20061003 で見たように、断らないらしい。
さて、しかし、マクロミルが選挙がらみを断るとする理由が解消される際には、すなわち、会員が全国に分散し高齢者の会員も多くなれば、偏りは雲散霧消するのだろうか?
そうとは、思えない。もともと、モニター調査の回答者には、高学歴、労働時間が短い、不安・不満が強い等の特徴があることの指摘がされている。id:hottokei:20050208。
新聞の世論調査などは、住民基本台帳や電話帳などから無作為に回答者を選ぶことで中立性を保とうとする。
これに対し、答える気満々の会員に質問を繰り返すネット調査は、信頼に欠けるという指摘もある。
記事中にあったこの2段落の文章は、少々正確さに欠ける。正しくは、こう理解されるべきだろう。
母集団から標本を無作為抽出することにより得られる推定量は、統計学的に誤差の範囲を押さえ込むことができるという点で、一定の信頼性を持てる。標本調査に対して、中立性という価値観を持ち出すのはお門違い。
電話帳は、母集団の代理としては不的確。住民基本台帳なら、住民票を現住地に移していない者も少なからずいるが、まだ、まし。
一方、ネット調査は、インターネットを利用しており、かつ、事前に自らの意志で登録しているモニターを対象に質問することにより行われている場合がほとんど。小遣い稼ぎの鼻息荒いモニターが、母集団を代表する標本であるかと言えばはなはだ疑わしく、ネット調査に基づく集計結果には偏りが含まれる恐れが強い。