統計のウソ

 日本経済新聞2月21日朝刊にあった「統計のウソ」。「「社会調査」のウソ リサーチ・リテラシーのすすめ」(谷岡一郎 文春新書)のアップデート記事といった感じで、食糧自給率国民年金保険料納付率、保育園待機児童数のデータに関するメタデータ(データの定義)に光を当て、それが意味するところを説く。

 これ自体は、大変立派なことを指摘している。そして大事なことは、この記事を書いた生活経済部立木奈美氏のような批判眼を、マスコミ関係者が持ち合わせているかどうか、ということである。

 話が日経に偏ってしまうが、2003年5月24日日本経済新聞は、「高齢者の6割近くが年金減額に理解」と報じた。

これは、財政についての意識調査アンケート財務省財政制度等審議会)を報じたものである。アンケートは、ネット上で行われ、回答は1043。そのうち、高齢者は19であり、うち11が年金減額に理解というものである。

 ネット調査は、自ら進んで回答をしてくれる客体に基づいて数字がまとめられるものではなく、世論を代表しているものではない。まして、2003年当時でも今でも、ネット調査に参加するような高齢者は、それなりの地位があり、かつ13問にも及ぶ調査に答えるのだからある程度の問題意識をお持ちの方が答えていることは想像に難くない。

 最近の日経は、ネット調査をおかずに記事を書くことに傾斜している。

 土曜日は「何でもランキング」。旬のもの、サービス、場所などの人気投票という意味では、ご愛敬ですまされる。

 日曜日は「The チョイス」。ライフスタイル、家族経営の在り方などを尋ねたものであり、ネット調査の数字を使って最近の生き方、世相を解説しようというもの。ネット調査は、マーケティングリサーチ的には正当化されているので、生活関連市場に関する参考にはなるかもしれない。

 そして月曜日は「クイックサーベイ」とズバリな名前。政治経済の動きに関する「世論」をしたり顔で解説してくれる。


 日経がよく使うネット調査会社は、マクロミル、インフォプラント。

 このうち、インフォプラントは、パネル属性調査の中でPDFファイルパネル特性調査結果 2004年度版を公開しており、その中で、自社のインフォプラントパネルの属性を、首都圏一般サンプルデータ(首都圏の同年代一般サンプル調査(株式会社リサーチ・アンド・ディベロプメント提供:2001年9〜10月実施、訪問留置法)と対比させて、次のように分析している。

 今後の余暇の使い方についての意向の中でも、インフォプラントパネルでは「趣味・創作活動を充実」という回答がトップにあげられています。これに次いで「観光・保養などの旅行」「自分の学習」といった、自分の知識・教養を広げる項目が上位にきており、首都圏一般サンプルデータがどちらかというとコミュニケーション寄りであることと、対比を成しています。

 このようなことは、パネルの偏りと言い切ってしまって議論を終わらせてしまうこともできるが、それでも、このような属性のパネルであることを自覚してデータを使いこなすにつなげることもできるので、その意味ではインフォプラントは好感の持てる分析をしている。

 一方、マクロミルには、フェイス事項に関する単純集計表の紹介にとどまり、このような分析は資料請求せよとなっており、闇の世界である。