元号の社会的コスト、いよいよ。
元号を改めるタイミングの候補として、2019年1月1日、4月1日、そして5月1日が挙げられ、どうやら5月1日に収れんしそうである。
時事ドットコムニュース 11月22日から。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017112201202&g=soc
即位・改元、19年5月1日有力=新元号、来年後半に公表-皇室会議政府は22日、天皇陛下の退位日程決定に向けて、皇室会議を12月1日に宮内庁特別会議室で開催することを決めた。皇室会議の意見を踏まえ、陛下の退位と皇太子さまの天皇即位の日程について来月上旬にも閣議決定する見通し。「2019年4月30日退位、同年5月1日即位・改元」が有力視されている。
(中略)
政府は当初、「19年3月31日退位、同年4月1日改元」と「18年12月下旬退位、19年元日改元」の両案を検討。年始は宮中行事が集中することから、いったんは「3月末退位」に傾いたが、19年4月の統一地方選では与野党対立の激化も予想される。政府内では、静かな環境で迎えるため、大型連休に重なる「4月末退位・5月1日即位・改元」が有力となっている。
平成に代わる新元号の公表時期については、国民生活への影響を最小限に抑えるため、退位日決定後に慎重に判断する。官民のシステム改修やカレンダー業界などに配慮し、一定の周知期間を置くことにしており、政府は来年後半にも公表する方針。改元までに6カ月程度の周知期間を置く案がある一方、「周知期間が長すぎると、新元号への賛否両論が出かねない」との懸念もある。(2017/11/22-19:38)
5月の大型連休期間中、は、盆正月の休みと同様、企業や役所の情報システムの入替がよく行われる時期と符合する。
実際、昨年の陛下の発言以降、情報システム業界は、現場から大手企業まで改元について語られることが散見された。
shigeo-t.hatenablog.com
output-knowledge.com
blogs.technet.microsoft.com
大手マスコミは、カレンダーや手帳に関わる印刷業界のことをよく引き合いに出してくるが、実際には、情報システム業界の方から、何かしらの働きかけがあったのではないかという推測も成り立つ。
前回の改元があった1989年は、Microsoft WindowsやDOS/V などなかった。会社にあったのは、メインフレーム端末でなかったら、NEC PC-9800シリーズ、ワードプロセッサー*1。
今日は、Excelでも日付管理が行われ、スプレッドシートの関数やマクロも駆使される。エンドユーザーコンピューティングは、専門部署がメンテしてくれるサーバ上のサービス同様に、対応できるだろうか。
そもそも、業務の一貫性の観点から、期中で年の表記が変わってしまうということは、世の支持を得にくいことであろう。元号を使い分けるためにシステムや業務のコストを費やすことに合理性を見いせるだろうか。
こうなってくると、業務が国内で閉じていたところでも、これまで平成としていた年表記を、この際、西暦で一気通貫してしまおう、という発想であろう。世間の元号離れが促されることになるのではないだろうか。
2019年は、10月に消費税増税という政治日程もある。これも、年の半ばのことである。
しかも、政治が国民生活への影響に配慮するというのなら、新元号の決定もさることながら、食料品などに対する軽減税率という消費税率の議論(税率が複線化するのか否か)を決着させて、要件定義に必要な情報を社会に対して提供すべきである。
閑話休題。
暦は、情報システム改修で完結する問題ではなく、その上で生活する人間に関わる問題である。西暦以外にも、イスラム諸国や、タイ王国、台湾など、独自の暦を使っている国は少なくない。しかし、元号は、改元というイベントを負っている分だけ、社会的コストは、重い。
書類に記入を求められる人たちは、正しく(まじめに)書いてくれる、という前提は、取り下げておいた方がよい。
d.hatena.ne.jp
渡航先の空港で入国拒否という実害もある。
hottokei.hatenadiary.jp
忖度なんかしちゃうようじゃ、エビデンス倒れ。
介護経営調査 公表先送り、厚労省「選挙に配慮」
毎日新聞2017年10月16日 06時30分(最終更新 10月16日 10時48分)2018年度介護報酬改定の基礎資料となる介護事業経営実態調査の結果公表を厚生労働省が衆院選後に先送りしていたことが、同省関係者への取材で分かった。社会保障費抑制の観点から介護報酬は厳しい改定になる見通しで、今回の調査結果は財務当局が報酬引き下げを主張する後押しになるデータも含まれる。引き下げ論が強まれば介護事業者らの反発も予想され、同省幹部は「選挙に影響を与えないため、公表を遅らせた」と明かす。
厚労省 介護事業所の利益率大幅低下 衆院選で公表延期
毎日新聞2017年10月26日 19時29分(最終更新 10月26日 19時29分)厚生労働省は26日、介護サービス事業ごとに利益率などを調べる介護事業経営実態調査(2017年度)の結果を公表した。利益率は全サービス平均3.3%で、前回調査(14年度)の7.8%から大幅に下がった。一般の民間企業(全体4.1%)より低いが、中小企業の2.6%を上回る水準。
…(中略)…
調査は全国約3万施設を対象に実施し、47%の1万5062施設から有効回答を得た。前回までは改定前年の3月分のみ調べていたが、季節による変動要因などを除くため今回は1年分調査した。
調査結果は例年9月下旬から10月初旬に公表しているが、厚労省が衆院選への影響を考慮し、公表を先送りしていた。【藤沢美由紀】
厚労省「安倍政権を忖度して介護経営調査の公表を選挙後まで先送りするよ!」http://buzzap.jp/news/20171016-kaigohoshu-sontaku/
2017年に入っても「森友学園問題に触れた」という理由で自己負担引き上げの介護保険関連法案を強行採決するなど、高齢化に伴って必然的に発生する介護問題への真剣な議論はおざなりにされ続けてきました。
安倍首相が10月9日にTBS系の「NEWS23」で放送された党首討論で「手遅れになる」と訴えた少子高齢化問題。(中略)「手遅れになるならこの5年間いったい何をしていたんだ?」という状態であることがよく分かります。
官報という公的一次情報は、オープンデータではない。
2014/3/19『官報』のオープンデータ化、改善を求める要請について
これらに対して、データカタログサイト data.go.jp のスタンスは:
インターネット版「官報」は、国⺠への周知を⼀層推進するとともに、利⽤者の利便性の向上を図るため、紙の官報と同じ内容を独⽴⾏政法⼈国⽴印刷局のサイトにおいて、提供しています。
官報には、法令等以外にも破産者の⽒名等、当該個⼈にとって不利益な情報も掲載されています。インターネット上において、これらの情報が誰でも容易に検索できることにおいては、個⼈情報保護の観点から配慮する必要がございます。
こうしたことから、公開期間を改ざん防⽌のための電⼦署名が付されている平成15年7⽉15⽇以降に拡⼤し、利便性の向上を図るとともに、個⼈情報の保護にも⼀層配慮するため、閲覧⽅法を⼀部変更いたしました。
インターネット版「官報」の公開の在り⽅につきましては、今後も運営状況等を勘案しながら、独⽴⾏政法⼈国⽴印刷局と協議、検討してまいります。"
インターネット版「官報」は、国民への周知を一層推進するとともに、利用者の利便性の向上を図るため、紙の官報と同じ内容を独立行政法人国立印刷局のサイトにおいて、提供しています。官報には、法令等以外にも破産者の氏名等、当該個人にとって不利益な情報も掲載されています。インターネット上において、これらの情報が誰でも容易に検索できることにおいては、個人情報保護の観点から配慮する必要がございます。
こうしたことから、公開期間を改ざん防止のための電子署名が付されている平成15年7月15日以降に拡大し、利便性の向上を図るとともに、個人情報の保護にも一層配慮するため、閲覧方法を一部変更いたしました。
インターネット版「官報」の公開の在り方につきましては、国民の皆様が利用しやすくなるよう今後も運営状況等を勘案しながら、独立行政法人国立印刷局と協議、検討してまいります。
なお、独立行政法人国立印刷局が提供する官報情報検索サービス(有料)では、PDFデータに加え、テキストデータも提供していることを申し添えます。
【回答府省】内閣府
官報のAPIによるデータ提供
電子行政オープンデータ実務者会議 第2回公開支援ワーキンググループ(2015年5月29日)には、資料3「公開に際し制度上の支障がある案件への対応」がある。
これによれば、財務省 ・官報情報検索サービス(独立行政法人国立印刷局)が料金を徴収するのは、以下の、2と3に該当。
徴収の理由:
1:コンテンツ使用の対価として使用料を徴収。(ライセンス許諾料、国有財産使用料等)
2:データ等の安定的な提供のためのコストを受益者負担を求めるもの。(システム使用料)
3:「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」(平成25年12月24日閣議決定)
高齢化が進む日本における 貧困線: 国民生活基礎調査における可処分所得中央値の推移
貧困分析に関する議論が近年進む中、厚生労働省が6月27日の平成28年国民生活基礎調査の結果が出した。
厚労省の発表を受けて、大手マスコミは、相対的貧困率が12年ぶりに低下した、「改善」した、という見出しを付けた。
一方で、Yahoo!ニュース「個人」の、以下の論考記事が面白かった。
湯浅誠が「子どもの貧困率が減った! 何がどう変わったのか」
news.yahoo.co.jp
大西連「貧困率は16.1%から15.6%へ改善 一方、悪化した数字も」
news.yahoo.co.jp
特に、後者の悪化した数字とは、記事中の「中央値(日本社会の真ん中)は18年で43万円減」のこと。
これは、相対的貧困率の基準である貧困線、その元になった[等化可処分所得]の中央値に着目したもの。
等化可処分所得の中央値、そのこの1985年から2015年までの30年間の推移を見ると、1997年の297万円*3まで毎回上昇していた。しかし、それ以降は、毎回減少に転じ、2012年は 244万円となっている。そして2015年の数字は、 245万円。1万円増加であるが、この程度では下げ止まったくらいにしか評価ができないだろう。
この数字を観察して、大西連は、以下のように綴る。
短期的には貧困率はやや改善しましたが、1990年代の後半から現在までに、所得の低い人たちが急速に増加していることがわかります。
貧困ライン自体が122万円と、「相対的貧困」でありながらこの金額では生存が厳しい「絶対的貧困」に近づいていることも大きな問題です。
確かに大きな問題である。
ただ、人口の年齢構成にも目を配っておこう。
総務省統計局の人口推計によれば、年少人口、生産年齢人口、高齢者人口の3区分(15歳、65歳で区切る)の割合で3年ごとに見ると、全体に占める生産年齢人口は、1991年の 70% をピークに減少に転じ、2012年は 63%、2015年は 61%となっている。
逆に増加しているのは、日本の高齢化に伴って就労所得よりも年金に依存する人口(世帯)。このことに留意しなければならない。
貧困線の設定に用いる可処分所得について、人口の27%に当たる高齢者人口(人口推計)のことを含めるべきなのかどうか。厳密には、高齢者のみからなる世帯(13252千世帯。世帯全体(49945千世帯)のうち、26%(平成28年国民生活基礎調査)。
実際、全体に占める年金暮らし世帯の割合が増えたことで、貧困線は下がり、その下がった貧困線未満の世帯比率が低下したという要素は大きいであろう(高齢者であっても、企業役員を続けて、勝ち組な人はいるだろうが、それは一握りである)。今の定義のままの「相対的貧困率」の数字は下がったとしても、社会的な課題としての貧困問題の改善、解決と結論づけることはできるものではない。
特に、子どもの貧困を評価するための貧困線には、現役世代の可処分所得、子育て世帯の可処分所得について検討するなど、きめ細かい評価が必要であろう。
このように、日本の高齢化は、これまでの統計データの見方、扱い方を吟味する必要があるかもしれない。
それは、完全失業率が3.1%と悪化する一方で、有効求人倍率が1.49倍と43年3カ月ぶり高水準となった労働市場について考える際にも、同じことが言えるであろう。
国立社会保障・人口問題研究所が4月10日に公表した将来人口推計(2015年国勢調査(総務省統計局)に基づく)によれば*4、生産年齢人口比率は、2016年 60.3%、2017年 59.9%*5。
2038年には、55%を初めて割り込み 54.9%。
2049年以降は 21%台を這っていくこととなる。
1985 1988 1991 1994 1997 2000 2003 2006 2009 2012 2015
相対的貧困率(%) 12.0 13.2 13.5 13.8 14.6 15.3 14.9 15.7 16.0 16.1 15.6
子どもの貧困率(%) 10.9 12.9 12.8 12.2 13.4 14.4 13.7 14.2 15.7 16.3 13.9
子どもがいる現役世帯(%) 10.3 11.9 11.7 11.3 12.2 13.0 12.5 12.2 14.6 15.1 12.9
大人が一人(%) 54.5 51.4 50.1 53.5 63.1 58.2 58.7 54.3 50.8 54.6 50.8
大人が二人以上(%) 9.6 11.1 10.8 10.2 10.8 11.5 10.5 10.2 12.7 12.4 10.7
中央値(a)(万円) 216 227 270 289 297 274 260 254 250 244 245
貧困線(a/2)万円) 108 114 135 144 149 137 130 127 125 122 122
1985 1988 1991 1994 1997 2000 2000 2003 2006 2009 2012 2015
15歳未満(千人) 26,042 23,985 21,904 20,415 19,366 18,505 18,505 17,905 17,435 17,011 16,547 15,945
15~64歳(千人) 82,535 85,013 86,557 87,034 87,042 86,380 86,380 85,404 83,731 81,493 80,175 77,282
65歳以上(千人) 12,472 13,785 15,582 17,585 19,758 22,041 22,041 24,311 26,604 29,005 30,793 33,868
15歳未満(%) 21.51 19.53 17.66 16.33 15.35 14.58 14.58 14.03 13.65 13.34 12.98 12.55
15~64歳(%) 68.18 69.24 69.78 69.61 68.99 68.06 68.06 66.92 65.53 63.91 62.87 60.81
65歳以上(%) 10.30 11.23 12.56 14.06 15.66 17.36 17.36 19.05 20.82 22.75 24.15 26.65
厚労省は、PDF解説文に含まれている統計表を、編集可能なExcelで提供することを、以前から行っていて、ありがたい。
もう一歩進めて、統計データの年次の標記は、西暦にしてほしい。元号ではなく。統計データ利用にも、元号の社会的コスト。
2016年国民生活基礎調査がその調査で調査世帯に尋ねているのは、前年一年間の可処分所得、すなわち2015年のものであることに、注意。このことを理解する際には、まず、厚労省資料の元号を、西暦に直して考えなければならない。
*1:厚労省の「平成28年 国民生活基礎調査の概況」の結果の概要 その「II 各種世帯の所得等の状況」http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/03.pdf#page=6(PDF 211KB の 6/8ページ )の「表10 貧困率の年次推移」をスクリーンキャプチャ
*2: Excelファイルでは、「平成28年 国民生活基礎調査の概況」の結果の概要、そこの http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/xls/10.xls 「所得に関する図表を、xls形式でダウンロードできます。」EXCEL 257KB のワークシート「Ⅱ-表10」で得られる。
*3:大西連記事では298万円と記されていたが、厚労省の表10では297万円である。
*5:最新の人口推計(総務省統計局)によれば、2017年5月速報値で 60.03% ( = 7608 / 12674)
*6:IV. 長期時系列データから、e-Statの「長期時系列データ(平成12年~27年)」の表3 及び 「我が国の推計人口(大正9年~平成12年)」の表3 を合成
経済分析力
日経24日朝刊から。
データ独占防止 悩む日欧当局
強さ増す巨大ネット企業 競争の物差し見直し (引用)
昨年8月に公取委がアマゾンに調査に入って以降、両者は水面下で激しい攻防を繰り広げた。公取委はEC市場の覇者であるアマゾンがあらゆる出品者に最低価格を強要すれば、ライバル企業の市場参入が阻害されると主張。
対するアマゾンは「最低価格保証は競争を害さず促進する効果がある」と真っ向から反論。膨大なデータを統計的に裏付けるリポートを公取委に提出し正当性を訴えた。
公取委側も理論武装のために今年1月、経済学の学位を持つ専門職員らによるデータ分析の専門部隊を創設した。公取委の中島秀夫事務総長は「経済のデジタル化が進むなか、より客観的に競争への影響を分析する能力が必要だ」と話す。
元号の社会的コスト。改めて。
将来起こりうる改元の際には、日付管理に関する情報システムの更改が社会的課題になる、とここで記したのは、5年前。
そのシステム更改の要件定義において、平成に続く新しい元号を取り込む形を事務処理体系を組むべきかどうか、一貫して西暦で扱うか、今から考えておいた方がよい、とも書いた。
果たして。
総務省はマイナンバーカードに改元の影響が出るかシステムを確認中だ。生年月日のデータに元号を使用しているためで「新たな元号で生まれた人のデータを追加する際にシステム改修が必要なのか、設定変更で済むのかを洗い出している」(住民制度課)という。
【引用は、右記事から: 日経電子版11日付け(有料会員限定)「改元へ官民始動 カレンダーやマイナンバー対応急ぐ」】
www.nikkei.com
下を見てほしい。平成26年=2014年と並行表記、なんなんですかね。
週刊東洋経済が「文書は最低西暦を併記、統計からは元号一掃を」(シニアライター:福永 宏)を掲載したのも、5年前だった。
元号をいつも正確に処理できる、という前提は、取り下げておいた方がよい。元号誤認による社会的混乱は、笑い話ではなく、渡航先の空港で入国拒否という被害までも出ている。